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2017.12.16‖
日野+冬海+天羽(金日・土冬前提)
土浦の無自覚な惚気。



「冬海ちゃん、脅されてるわけじゃないんだよね?」
 昼休み。
 カフェテリアで同じテーブルを囲んだ小さな後輩に、天羽は尋ねた。きょとんと見返してくる大きな目が、音がするのではないかと思うほどゆっくりと瞬きする。そして、心底不思議そうな声が桜色の唇から零れた。
「おどす…?」
「……あー、噂になってるやつ?」
 もごもごと口を動かしながら、冬海の隣りに座っている日野が相づちを打った。学内コンクールで仲良くなってから、この三人で過ごすことも増えた。冬海の学年も学科も違うのでいつもというわけにはいかないが、こうして時々一緒にお昼を取ることもある。頑張っている二人が天羽は好きだった。だから、その噂を聞いたとき、まさかとは思いつつも心配になってしまったのだった。
「そう。冬海ちゃんが土浦くんに脅されて付き合ってるって話」
 天羽だって、未だに信じられないでいるのだ。
 このかわいらしい冬海とあの強面の土浦が付き合っているという事実が。
 なぜなら、報道部一と自負している天羽の観察眼を持ってしても、二人が恋人同士であるという断片すら見つけられないでいるのだ。冬海は未だに土浦の前に出れば緊張しているようだったし、ぶっきらぼうな土浦はおよそ恋人を前にした男の態度とは思えない。だから付き合っているという事実を知らなければ、二人がそういう関係だとは誰も思わないはずだ。
 幸か不幸か、学内コンクールに出たという実績のある二人は有名人なので、恋人同士になったという話はあっという間に広まってしまったが、付け加えるのなら意外性という意味でもダントツに生徒たちの好奇の的である。
 日野に少しだけ視線を移して、天羽は思う。
(日野ちゃんがヴァイオリンロマンスを成就させてたら、もうちょっと話題も分散したんだろうけどなー)
 ヴァイオリンロマンス再来の呼び声が高かった日野は、結局コンクール出場者の誰とも恋愛関係を発展させることがなかった。聞く人が聞けば音が変わったと言うのだが、音楽に関しては門外漢の天羽は単にヴァイオリンを変えたからだという日野の言い分を信じていた。おかげでコンクールが終わった今、生徒の興味は土浦と冬海のカップルの動向に集中していると言ってもいい。
 だからこそ、こんな噂が広まることになったのだろうけれど。
 冬海に視線を戻すと、困ったように彼女は眉を寄せた。
「ん? 何、どうしたの?」
「いえ…、あの……。土浦先輩は、そんなこと…」
「しないって?」
「…はい」
 土浦の弁護をしようとしていた冬海の言葉のあとを継いだのは日野だった。弁当を片づけ終わり、テーブルに肘をついている。
「そんなのはわかってるんだよね」
 ねえ、と天羽に同意を求める。日野は首を傾けて、冬海に顔を向ける。
「私が心配してるのはね、冬海ちゃん」
 後輩の大きな目をひたと見つめて、日野は噛んで含めるようにして告げる。
「土浦くんが、冬海ちゃんに無理をさせてないかってこと。怖かったりしたら、いつでも言ってね? 冬海ちゃんが言えなかったら、代わりに言ってあげるから」
「いえ…あの…」
 冬海は大きく息を吸った。そのかわいらしい顔を真っ赤に染めて、つかえるように口にした。
「土浦先輩は…、その、とても優しいです」
「は?」
「え?」
 天羽と日野は、その告白にぽかんとしてしまう。
 この自己表現が苦手な冬海が、まさかこうも明確に答えを返してくれるとは思わなかったのだ。つかえながらも、懸命に冬海は言葉を紡ぐ。
「土浦先輩は、私のことを脅したり、無理をさせたりは、絶対にしない、です。香穂子先輩たちが心配してくださるのは、とても嬉しいですけど…」
 そこで何を思い出したのか、ほんのりと頬を染め、冬海はとてもかわいらしく笑う。
「…私は今のままで、……土浦先輩と一緒にいられるだけで、とても幸せなので…」
 極上の笑顔に、天羽も日野も大きく溜め息をつくのが精一杯だった。
「………よっぽど好きなんだねぇ」
 呆れ半分、感心半分で言えば、ますます冬海の顔が赤くなった。その初々しい仕草に、天羽はぐりぐりと眉間を揉みほぐした。
「土浦くんがなー、もうちょっと愛想よくするとか、それっぽい態度取るとかしてくれれば…」
「それは求めるだけ無理なんじゃ…」
 ぱたぱたと手を振りながら苦笑していた日野の動作が止まった。
 その唐突さに不思議を覚え、顔を上げた天羽の頭の上から、それは降ってきた。
「……俺が、何だって?」
 天羽は一瞬だけ、すべての動作を止めた。聞き覚えのある声。間違いなく、話の渦中にいる人物だ。彼にとっては不愉快な話題である。作り笑いを張りつけて見上げれば、案の定、眉間にしわをよせ、不機嫌そうな顔の土浦が立っていた。
「土浦くん、冬海ちゃんのこと脅してなんかいないよね?」
「………はぁ?」
 何のことだと言いたげに、土浦は腕を組んで天羽を見下ろした。
 まあまあ、と天羽は場を取り繕う。せっかくなので、土浦の反応も見てやろうと思ったのだ。話を聞く前に逃げられては商売上がったりである。
「最近ね、音楽科が中心ではあるんだけど、そういう噂があるんだよ。『冬海ちゃんは土浦くんに脅されて付き合ってる』って」
 なるべく軽く言ってみせるが、土浦の不機嫌だった顔はますます険しくなっていく。怒らせたな、と天羽は思ったが、ジャーナリストになるには、こんなことで怯んでいてはいけないと質問を続行する。
「そういうわけで、当事者に聞いてたってわけ」
 はあ、と大きく、それは大きく土浦の口から呆れた溜め息が落ちた。土浦は無言で対面の冬海へと視線を移すと、眉間のしわを深くする。
「———バカバカしい」
 低い声に、冬海がはっとして顔を上げる。ひどく不愉快そうな声で、土浦はその噂をばっさりと斬り捨ててみせる。
「こいつが、俺に脅されて付き合ってる? ふざけるのもいい加減にしろよ」
 土浦がこんなに怒るとは予想外だ。さすがに自分が脅迫犯にされては気分はよくないだろうと、天羽は土浦を宥めにかかった。
「まあまあ、土浦くん」
 そんなに怒らないで、と言いかけた天羽を遮って忌々しそうに舌打ちをした土浦の顔は凶悪だ。
「……あ、あの、土浦先輩…」
 ようやく声を出した冬海だったが、土浦に睨みつけられて、びくりと身体を竦めてしまった。
 だからそういう態度が誤解させるんだって、と天羽は思うが、今この状況でつっこめるほどの度胸はない。日野も同様のようで、口を挟めないでいた。
「脅されて付き合うって、こいつがそんなに自分の意志がないように見えるのか? だとしたら大きな勘違いだな」
 そんなこともわからないのか、と鼻を鳴らした土浦に、天羽と日野は目が点になった。
 冬海は恥ずかしそうに俯いてしまっている。
(………この、男…)
 ひくり、と頬が引きつるのがわかった。
 貶められた自分のことではなく、冬海のことに対して怒っている。しかし当の土浦は平然としていて、ノロケられたこちらがいい迷惑だ。はっきり言って、こういう男は始末に困る。本人はノロケた気がさらさらないのも問題である。
 冬海にノロケられ、土浦にもノロケられ、話題を振った自分がいい面の皮だと天羽は思う。
 結局、同じ立ち場の日野と目を合わせて、呆れたように笑うしかなかった。





オフ用にしようと思ってたネタの救済。
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