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2017.10.23‖
※記述だけですが土冬+柚日前提。女の子話。



 チョコレートを刻んでいると、あたりは甘い香りに満ちていく。カカオの香りは少女たちの心を浮き立たせた。
 香穂子の自宅のキッチンを借りて、今日はバレンタインのチョコ作りをしている。笙子はほんわかした気分になって、顔を上げた。目の前には、学内コンクールで知り合った二人の先輩が、自分と同じようにチョコレートを刻んでいる。
「おいしそうなにおいだけど、これまだおいしくないんだよね」
「そうですね。製菓用のチョコレートですから…」
 欠片を摘み、残念そうに呟く香穂子に頷いて、笙子は刻み終わったチョコレートをボウルに開ける。
「おいしくなるといいよね」
 天羽に言われ、笙子も香穂子も頷いた。自分で食べるわけではない。恋しい人に渡すためのプレゼントだ。上出来にすぎても困ることはない。
「冬海ちゃんは、何作るの?」
 天羽に問われ、笙子はチョコレートのボウルに砂糖とバターを加えながら頬を染めた。
「え、えと。ブラウニーです。持ち運びも簡単ですし、それに、つ…、土浦先輩は、甘いものがお得意ではないので…」
 笙子は甘いものが苦手な土浦のために、エスプレッソを加えたブラウニーを作る予定だった。ほろ苦いブラウニーなら、土浦も食べてくれるだろうと思ったからだ。
「わー、おいしそう! 上手にできるといいね」
「は、はい」
 にこり、と笙子が笑うと、天羽の取材対象は香穂子に移る。インタビュアーさながらに、手にしたスプーンをマイク代わりに突き出した。
「で、日野ちゃんは?」
 楽しそうな天羽とは対照的に、香穂子は大きく息を吐いた。
「………抹茶のトリュフ」
「おいしそうじゃん。何で、そんなにテンション下がってるのさ」
 だってさー、と香穂子は刻み終わったチョコレートをさらに小さく刻んでいる。
「あの人、舌は肥えてるわ、親衛隊からもたくさんもらうわ、何て言うか、頑張っても無駄? みたいな」
「そんなこと言っちゃってー。それでも作って渡したいんでしょ? だから頑張るんでしょ?」
 天羽の言葉にうっと息を飲んで、香穂子は頬を染める。
「そ、それは、そうなんだけど…」
「愛、だよね」
 にやり、と笑う天羽に、香穂子は顔を真っ赤にして反撃した。
「天羽ちゃんだって、それ本命でしょ!?」
「残念〜。これは報道部への差し入れです。だから簡単なのにしたのさ」
 えー、ずるい、と声を上げる香穂子にくすくすと笑いながら、笙子は湯煎にかけ終えたチョコレートを火から下ろし、別のボウルに砂糖と卵を割り入れた。泡立器を手にすると、羨ましそうに香穂子が頬を膨らます。
「しかも冬海ちゃんみたいに、お菓子作りが似合うわけでもないし」
「そ、そんなこと…!」
 首を振ると、天羽も香穂子に同意したように大きく頷いた。両手の親指と人差し指でカメラのフレームを真似ながら笙子を覗き込み、少し怒ったように口を曲げる。
「冬海ちゃんは、いかにもかわいいお嫁さんって感じだよね。あー、ほんとに土浦くんにはもったいない」
「そうだよね。冬海ちゃんと土浦くんって、美少女と野獣だし」
 土浦は絶対に聞いていない、という安心感からか、天羽も日野も言いたい放題である。
「志水くんとか火原先輩とかのが、まだわかるっていうか」
「土浦くんが、一番ありえなかったよね」
 香穂子はそう言いながら、生クリームを沸かしはじめた。当の笙子は、先輩たちの言葉にどう返したらいいのかわからない。けれど、自分の中にいるのは、土浦ひとりだけだ。笙子は首を振る。
「た、たしかに、志水くんは男の人っぽくなくて話やすかったですし、火原先輩も楽しい方ですけど、あの……その……、土浦先輩は、優しかったです」
 笙子の言葉に、先輩二人は驚いたように手を止めた。そして一瞬のあと、笑いながら顔を見合わせる。
「別に土浦くんが悪いっていうんじゃなくて、予想外だったねって話。それにしても、冬海ちゃん、本当に土浦くんのこと好きなんだね」
「………え、あ、えと……」
 しみじみとした香穂子の口調に、思わず口にしてしまった言葉の意味を理解して、笙子の頬が真っ赤に染まる。それを微笑ましく見ながら、天羽が手元のオレンジピールを刻みはじめた。
「まあ、大切な人へっていうのはみんな変わらないんだしさ。愛情こめたらおいしくできるって」
「……そうですね」
 その言葉にふわりと心が温かくなる。土浦は大切な人だ。それと同じように香穂子も天羽も、大切な人。泡立器を使いながら、笙子は告げた。
「あ、あの。できれば香穂子先輩にも天羽先輩にも差し上げたいなって思うんですけど、上手にできたら受け取っていただけますか?」
「え? 私にもくれるの? 大歓迎に決まってるよ!」
 香穂子がウキウキと答えると、天羽ももちろん、と片目をつぶった。
「私も二人にあげるつもりだったし、みんなで交換会だね」
 はい、と笙子も笑顔で答えながら、目の前のチョコレートに取り組みはじめた。おいしくできますようにと、大切な人を思い浮かべながら、笙子はたくさんの愛情をこめてボウルの中身を混ぜ合わせた。





天羽さんのはオランジェットです。あれおいしいよね、好き。
女の子話を書くと、カップリングというよりも本当に女の子の話になってしまって、うっかりすると百合じゃないの? って感じがしなくもない。女の子は仲がいいとくっつきたがる傾向があるから、何もなくても百合っぽくなるんだよなー。本当に、ただ仲のいい女の子を書きたいだけなんだけど、難しいなぁ。
リクエストいただいたものとは、やっぱりずれてしまいましたが、楽しんでいただければ幸いです。ありがとうございました!

タイトルは駅にある無料冊子かなんかのアオリだったと思う。口に出してみたときの音が好きで、いつか使いたいと思っていたのでした。
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