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2024.11.22‖
金澤生誕祭のチャット初出。
パラレル設定。



「お呼びになりましたか」
 カナザワはその扉を開きながら尋ねた。中にはこの国の王女がいる。気まぐれな彼女は、時折こうしてカナザワを呼び出しては無理難題を言いつける。今日もそうだろうとやってきたカナザワを、カホコは真剣な表情で迎え入れた。
「今日はね、ヴァイオリンを聞いてほしいの」
「…は?」
 小首を傾げて尋ねたカホコに、カナザワは目を瞬かせた。
「……それは構いませんが…。しかし、ヴァイオリンのレッスンはオウサキの……」
「違うわ。レッスンじゃなくて、あなたに聞いてほしいの」
 疑問符だらけのカナザワに、カホコはいたってまじめに告げる。
「一曲でいいのよ。ね、お願い」
「は、はぁ」
 カホコの勢いに押されたカナザワは、思わず頷いていた。それを確認して、カホコはなぜか嬉しそうに笑った。
「じゃあ、そこに座って」
 示された先は、彼女のお気に入りのソファだった。さすがに、と固辞しようとしたカナザワを制して、カホコは強くそれを告げる。
「いいから、座って」
「……はい」
 カホコの真剣な表情に断る言い訳を思いつけず、カナザワはソファに腰を下ろした。それはひどくやわらかく包み込むようで、心地いい。
 そのさまを見ていたカホコは頷いてヴァイオリンを構えた。弓が弦を滑る。
 奏でられたのは『Happy Birthday to You』。
 目を丸くするカナザワに向かって、カホコはヴァイオリンを奏でる。心をこめて。
 曲が余韻を残して終わると、はにかみながらカホコは告げた。
「お誕生日おめでとう」 
 驚きに身動きひとつできないカナザワに近づいて、カホコは小さなキスを唇に落とした。
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