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2024.04.24‖
※年齢制限※ 18歳未満閲覧禁止/パラレル



 二度目の口づけを交わしたあと、二人は手を繋いで、できるだけ急いで家へと帰りました。やっと通じ合った想いに急かされるように、玄関のドアを閉じるともう一度口づけをしました。今度は触れるだけではなく、深く探り合うような口つけでした。
 梁太郎はがむしゃらに頭ごと笙子を引き寄せて、やわらかな唇をこじあけ、味わいつくすように舌を蠢かせます。はじめての感覚に、笙子はついていくのがやっとでしたが、求めているといわんばかりの梁太郎に、不思議と胸が満たされていました。
 ようやく唇が離れると、梁太郎は笙子の身体をぎゅっと抱きしめて、大きく息を吐きました。
「………ごめんな」
 悔恨をにじませた声に笙子が顔を上げると、その声そのままの表情をして梁太郎は言いました。
「俺はあいつみたいな金持ちじゃないから、この服みたいな上等なものも買ってやれないし、気も利かないから今日見たいにお前のことを泣かせると思う。でも、お前が頷くなら、もう離してやれない。だから、ごめんな」
 梁太郎の言葉に、笙子は目を見開きました。
 残酷なほどに甘い宣告をして、梁太郎は驚きに動けない笙子を強く抱きしめました。笙子は胸がいっぱいになって、思わず涙をこぼしてしまいました。
「お、おい……」
「いえ、あの……、嬉しくて……。ずっと、一緒にいられるんですね」
 慌てる梁太郎に、笙子はにっこりと笑顔を浮かべます。本当に本当に嬉しくて、こんな言葉では伝えきれません。
 そんな笙子に梁太郎は我慢できないというように呻きました。
「………だから、我慢してるんだって、言ってるだろう…」
「……え? あ、きゃあッ」
 笙子は梁太郎に抱き上げられて、思わず悲鳴を上げてしまいました。梁太郎の胸の中にすっぽりと収まってしまい、あまりの至近距離に心臓はとても早い速度で鼓動を打っています。
 そんな笙子に苦しい顔で笑いながら、梁太郎は言いました。
「お前が煽ったんだから、責任取れよ」



「あ、え……、あ、あの、あの……」
 梁太郎に抱かれたまま、笙子は梁太郎の部屋のドアを潜りました。そして普段梁太郎の使っているベッドの上に座らされて、ぱちぱちと瞬きをします。なぜこんなところに、という疑問が頭の中を駆け巡ります。
 しかし、身体は正直で、頬が熱くなって、胸が苦しくなって、泣いてしまいたい気持ちになりました。それがどうしてかわからず、答えを求めて見上げた梁太郎は、自分のシャツを脱ぎ捨てているところでした。
「……これから何をするのかわからない、なんて言うなよ? 頼むから」
 不思議そうな笙子に、梁太郎はずいと迫りながら釘を刺しました。こう言われてしまうと、何故と問うことは、ひどく愚かなことのような気がします。しかし、笙子は本当にわからないのです。人魚が愛を育むのには、人間のような行為は必要ありませんでした。だから、この先に待ち受けているのが何なのか、さっぱりわかりません。
 けれど、そんな笙子の思考を遮るように、梁太郎は口づけました。ちゅ、ちゅ、と音を立てて何度も口づけを繰り返し、その戯れに満足してから、笙子の口の中に舌を滑りこませます。
「………ん、ん、んっ」
 口の中をなぞり、絡め、吸い上げられて、笙子は甘い声を上げ続けました。その声も梁太郎に吸い取られてしまいます。口の中を探られることに夢中になって、笙子の思考はとろとろと溶けていきました。梁太郎の胸に縋りついて、もっととねだるように口を開いてしまいます。
 そんな自分のはしたなさに気づくこともない笙子の背に、梁太郎の手がたどり着きました。そして服のファスナーを見つけ出すと、一気にそれを引き下げました。服の中にこもっていた生暖かな空気が霧散して、背中にひんやりとした空気を感じます。それに驚いて口を離した笙子を、梁太郎は熱のこもった瞳で見つめました。何が起こるのかと、ますます身を固くする笙子の身体から服を剥ぎ取ると、それを乱暴に床に落とします。どうして、と笙子が視線で問えば、梁太郎は苦々しく歪めた顔を逸らしました。
「自分が渡しといてなんだけど、あいつからの服とか着るな。俺が嫌だから」
「は、はい」
 笙子が素直に頷けば、梁太郎は一層困ったように笑います。
「俺のわがままなんだから、そんなに素直に頷くなよ」
「で、でも……、あの…。そんなふうに言っていただけるなんて、思っていなかったので、その……嬉しいですから…」
 露出した胸を隠しながら恥じらい告げる笙子に、梁太郎は一瞬身体を強張らせ、怒ったように呻きました。
「だから、これ以上煽るなよ…!」
 激情を孕んだ声とともに肩を押され、笙子は天井を見上げていました。そこに梁太郎の顔があらわれたかと思えば、それはすぐに近づいてきて口を塞ぎました。今まで触れ合えなかった分を取り戻すかのように、梁太郎は笙子を求めてきます。そして、すっかり露になっている肌に、大きな手が触れました。
「………ッ」
 接触にびく、と震えた笙子に、一瞬動きを止めた梁太郎は、けれどもう一度笙子の肌に触れました。やわらかな肌は手指に吸いつくようで、手放しがたいと梁太郎は思いました。
 梁太郎は唇をずらし、笙子の肌をたどります。首筋を下って、鎖骨を噛み、胸を覆う腕を取り払い、白い胸へと下りていけば、その頂はふるふると震えています。梁太郎はそれを大事そうに口に含むと、舌で丹念に嬲りました。もう片方も手で包みこみ愛撫すれば、笙子の喉からは細い悲鳴のような喘ぎが絶えずこぼれます。肩を掴んでくる笙子の手の力に、自分が味わっている感触に、その愛らしい声に煽られるように、梁太郎の息も荒くなっていきます。
 笙子の白い肌は、口づけと胸への刺激だけですっかりと上気し、淡く朱に染まって戦慄いています。その初心な様子に、梁太郎は優しくしたいような、乱暴にしてしまいたいような矛盾した気分になりました。
「……笙子…」
 低く囁けば、それだけで笙子の身体は震えました。笙子の羞恥と期待に満ちた瞳は涙に潤み、熱に火照った肌は、くらくらするような芳香を放っています。梁太郎は我慢ができなくなって、そろそろと指を下肢へと移動させていきました。胸からの感覚にいっぱいいっぱいになっている笙子は、まだそれに気づけません。
 梁太郎の指がそこへたどりつくと、笙子の全身がびくりと跳ねました。
「…………っ、あ!」
 鋭い声を上げて、笙子は身体を強張らせました。下着の上から与えられた今まで知ることもなかった感覚に、すっかり笙子は混乱してしまいました。梁太郎に口づけをされて、胸に触れられて、それからずっと身体の奥のほうがむずむずしていたのです。その行き着く先が、梁太郎の指の触れているところだとわかると、ひと際激しい羞恥が襲ってきます。自分でもじっくりとは見たことのない器官が、梁太郎と愛し合うためのものだと本能が理解したからでした。
「……腰、上げられるか?」
 下着に手をかけて尋ねる梁太郎のかすれた声に、笙子はぎゅっと目をつぶって頷きました。恐る恐る腰を上げると、梁太郎の肩に置いた手がぶるぶると震えます。梁太郎はそんな笙子の足から下着を抜くと、小さな身体に覆いかぶさって額に口づけを落としました。
「もっと、ちゃんと掴まってろよ」
「は……、はい…」
 梁太郎の言葉どおりに、笙子は細い腕を梁太郎の首に絡めました。お互いにドクドクと音を立てて、心臓が激しく脈打っているのが聞こえてしまいそうな距離でした。
 緊張に震える笙子の腹を撫でて、梁太郎はそこに触れました。濡れるというほどではないにしろ、じっとりと湿り気を帯びているのに安堵しながら、梁太郎はゆっくりと指を進めていきます。梁太郎の指が中へ入ろうとすると、ぎゅっと身を固くした笙子が首に縋りついてきました。怖い、と笙子がこぼした声に、梁太郎はゆっくりと宥めるように背を撫でます。
「なるべく、優しくするから。な?」
 言いながら、顔中に口づけを落とします。最中、偶然に唇同士が触れ合うと、一旦離れて息を継ぎ、梁太郎はまた深く口づけます。舌先で笙子の唇を舐めれば、一瞬戸惑うように震えた笙子の唇が開き、誘われるようにして梁太郎はその中へ舌を進めます。梁太郎は歯列をなぞり、上あごを撫で、口の中のあちこちに触れて、最後に逃げ場をなくした笙子の舌に自分のそれを絡めました。違う温度だというのに、お互いにそれは熱く、笙子は思わず喉を鳴らします。その拍子に飲みこんだのが、自分の唾液なのか、梁太郎のものなのかもわかりません。飲みこみきれない唾液は唇の端から落ちて、肌を伝います。その冷たい感触にすら笙子は背を震わせました。
 口づけに気を奪われた笙子の下肢で、梁太郎の指が動きました。腰を抑えられて、笙子の逃げ道は失われています。ぴり、と痛みを感じて喉を反らすと、笙子は梁太郎の首にまたしがみつきました。
 梁太郎の指が入りこんだ狭い内部は、外とは違い濡れそぼっていて、ひどく熱を帯びていました。梁太郎も興奮を抑えきれず、痛みにしがみついてくる笙子の背を撫でながらも、指を抜こうとはしません。
 広げるようにゆっくりと動かし、指を折り、時には引っ掻いたりしながら、梁太郎はその中を丹念に解していきます。その度に押し出されたような笙子の鳴き声が響きました。
 そして、ぐり、と梁太郎の指がそこに触れたとき、笙子は背中をのけぞらせて声を上げました。
「…ヤ、ぁ……ッ」
 今まで以上の感覚でした。びりびりと身体を駆け巡るものに耐えきれず、笙子は梁太郎の首に爪を立ててしまいました。しかし、梁太郎はそれに頓着することなく、その部分を執拗に撫でてきます。
「……ここか?」
「や、や……ッ、だ、だめ、だめです……! そこだめ…ッ、ヤ…!」
 感じる部分を集中的に捏ねられて、笙子はひと際大きく身体を震わせました。
 両足の間から引き抜かれた梁太郎の指は、ぬらぬらと濡れて光っています。
「……大丈夫か…?」
 ぐったりとした笙子に、梁太郎は気遣わしげに声をかけました。しかし、その瞳には間違いなく熱が宿っていて、その目にさらされて笙子はぞくりと背筋が怖気るのを感じました。
「ごめんな。優しくしたいけど、もう無理だ」
 瞳と同じように熱を孕んだ低い声に、笙子は梁太郎を見ました。息を荒くした梁太郎は、笙子の足を持ち上げて、その間に身体を入りこませます。そして身体を折って笙子の目を至近距離で覗きこむと、涙のにじむ目元に口づけをしました。ぐっと腰を抑えられて、優しく頬を撫でられて、笙子は梁太郎が求めている物を知り、小さく頷きました。
 それが合図だったかのように、梁太郎がじりじりと腰を密着させてきます。ゆっくり沈められていくのに圧迫感を覚えながら、笙子はぎゅっと梁太郎の首を抱く腕に力をこめました。
「…っ、あ、ぁ………ッ!」
 梁太郎も梁太郎で、ひどく窮屈な内部に息を詰めました。自らに襲ってくる苦しさに笙子の感じているつらさを鑑みて、痛みに軋む彼女の身体を撫でました。それなのに内部は熱くとろけていて、梁太郎は一気に奥まで貫いてしまいたい衝動を堪えて尋ねます。
「平気、か…?」
 聞いてから、馬鹿馬鹿しい質問だったと眉を寄せました。
 先ほどまでは愛撫に熱くなっていた肌は、今は汗に冷えていて、強張る身体はこんなに震えているというのに、平気なはずがないのです。けれど、笙子は平気だと頷くでしょう。それを思って、梁太郎は笙子の細い身体を抱きしめました。
「悪い。馬鹿なこと聞いた。………続けても、いいか?」
 笙子はそんな梁太郎にしがみついて、懸命に頷きました。
 声も出せない笙子に、梁太郎は本当は止めた方がいいのかもしれないと考えました。けれど、身体は正直で、笙子のやわらかい身体を貪り尽くしたくてたまらないのです。笙子の答えが是であったことをいいことに、梁太郎は暴走しないように腰を押し進めました。
 そうして、時間をかけてすべてを埋め尽くすと、笙子の唇に小さく口づけを落として、梁太郎は大きく息を吐きました。
「………全部、入った」
「ほ…、本当ですか? ……よかった……」
 梁太郎の声に、笙子は涙を浮かべたまま、嬉しそうに微笑みました。それに煽られて、梁太郎はぐっと下腹に力をこめます。
「……あ! きゃっ…、え……?」
「お前が悪い。……動くぞ」
 内部で力を増したものに笙子が驚きの声を上げると、梁太郎はつらいだろう笙子の身体を慮ってゆっくりと身体を引きました。笙子の全身が戦慄きます。ゆるゆると動いていると、そのうち笙子の腰も揺れ始めました。漏れる声も苦しいばかりではなく、甘くねだるようなものに変わって、吐き出す息にも熱がこもりはじめます。
 赤い唇の紡ぎだすかわいい声に梁太郎はほっと息を吐いて、ゆっくりとしていた動きを早めました。梁太郎も笙子の内部に締めつけられて、もう限界が近かったのです。
「あ、……ッ、や、りょ、たろ……さ……!」
 激しくなった抽送に、笙子は甘い艶を帯びた嬌声を上げました。甘い肉と声は、梁太郎をどんどん高みへ押し上げていきます。
 同じように、笙子も梁太郎に身体の奥を突かれ、確かに快感を追っていました。いやらしくくねる身体を梁太郎に絡ませて、笙子はいやいやをするように頭を振りました。
「ヤ、ヤ、……だ、め、だめ……! ま……っ」
 高い声を上げた笙子は、びく、とつま先を震わせて身体を強張らせました。
 ぬめる内部はぞわぞわと梁太郎を締めつけます。耐えきれずに、梁太郎は身を二つに折るように屈めました。
「………ッ!」
 そして、ぶる、と背筋を震わせて、梁太郎は笙子の中に熱を吐き出したのです。



「………悪い。大丈夫か?」
 まだ整わない息の下で、梁太郎は笙子の中から抜け出しながら尋ねました。笙子の中は、まだ熱く淫蕩と梁太郎を誘いましたが、はじめての行為に疲れきっている笙子に無理はさせられません。甘い誘惑を振り切って、梁太郎は身体の下でぐったりとしている笙子の額を長い指で撫でました。ぼんやりとしていた笙子は、その感覚を与える梁太郎に視線を合わせます。恥ずかしそうに頬を染めて、笙子は頷きました。
「あ……、えと、はい、あの、大丈夫です……」
 その様子に梁太郎は、ほっと一息を吐いて、笙子の身体を抱きしめます。愛しさが胸に満ちて、離せなかったのです。そして、そのまま抱き合っていると、お互いの肌の温度に安心を覚えて、二人はゆっくりと夢の世界に落ちていきました。
 寄り添って眠る二人の顔には、穏やかな笑顔がありました。
 二人はきっと、同じ夢を見ていることでしょう。ずっと続く二人のこれからを。
 そして夢のとおり、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。
 めでたし、めでたし。


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