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2017.10.23‖
オフ本に派生した話



 ガタン、とエレベーターが不自然に揺れて、照明が落ちた。一瞬前に、大きく雷鳴が轟いたばかりだ。最悪の事態に、土浦は眉間にしわを寄せ、悪態を吐く。
「マジかよ」
 ガラス張りの外を見やれば、つい数十分前には降る気配すらなかった雨が、ざんざんと降りしきっている。雲間に新たな稲光を見つけた土浦の視界の端に、小さく震える身体が映った。視線をやれば、そこには学内コンクールで知り合った後輩がいる。
 土浦は、その後輩がどうにも苦手だった。そして同様に、彼女も自分のことを苦手にしているのだと、土浦は気づいていた。そんな二人が、どうして同じエレベーターに乗っているのかといえば、理由は単純だ。
 文化祭でのアンサンブルコンサートに人を呼ぶため、学内コンクール参加者でバンドをやることになった。衣装など用意している暇はない。しかし、どうせならワンポイントでいい、同じものを身につけるのはどうかという話になった。その買い出しに出てきているのである。
 事を提案した日野と天羽は、外せない用事があるとかで、後から合流することになっている。彼女らが来るまでに、ある程度の目星をつけておくのが冬海の役目だ。土浦は、といえば、単なる荷物持ちだった。だから、本来ならば日野や天羽と同行してもよかったのだが、彼女たちが言うことには、冬海を一人きりにしてはおけないというのである。土浦には意味のわからない理由ではあるが、日野と天羽があまりに力説するので、思わず頷いてしまった。
 荷物持ちに土浦が指名された理由は、月森、志水、柚木はそういうことに不向きであり、向いていそうな火原は受験生なので外しておこうという理由だった。加地でもいいではないか、と一応の反論を試みたが、日野の外せない用事というのが、加地のスキルアップだというのだから仕方がない。バンドはあくまでアンサンブルの前座である。アンサンブルが完成しないと言われてしまえば、それ以上の反論は無意味だった。
 そうして渋々ではあるが訪れたデパートで、衣料品売り場に行こうかとエレベーターに乗ったのだ。平日の昼間というので、他の客は同乗しなかった。短い時間だとしても、エレベーターの中で二人きりというのは気まずい、と土浦がそう思っていたときだ。
 思わず、耳を塞ぎたくなるような雷鳴だった。落ちたか、と疑う間もなく、この状況である。仕方なしに、土浦は緊急ボタンを押す。繋がった先にいつ頃動くのか、と問うが、答えは芳しくない。電力が復旧すればすぐに、と言われたが、具体的な時間はわからない。土浦は通話を切り、壁に背を預けて腕を組んだ。大きく息を吐くと、驚きに硬直していた冬海が、おどおどと視線を上げてくる。
「あの…」
「いつ頃復旧するかは、わからないってさ」
 冬海の問いを先回りして答えれば、目に見えて冬海は落ち込んだ。落ち込みたいのはこちらもだ、と土浦はがりがりと乱暴に頭を掻く。ガラスの向こうに目をやれば、雨は止む気配を見せない。再びチカ、と雷が目を刺した。その稲光の大きさに、また近くに落ちるのかと、土浦が懸念したときだ。どん、という振動が身体に伝わった。
 ゴロゴロゴロ、と雷鳴の名残が尾を引いた。しかし、土浦はそれを聞いている余裕がない。小さく悲鳴を上げた冬海が、土浦の胸に縋りついてきたのだ。驚きに、土浦は一切の動きを止めた。
 冬海が自分に抱きついてくるなど、転地がひっくり返ってもありえないことだった。タイミングを考えれば、冬海が雷が苦手なのだということはわかる。手近にいたのが、土浦一人きりだというのも、理解している。それでも、思考がついてこない。
 柔らかな身体が震えている。細い指が、力いっぱいに土浦のコートを掴んでいた。
「………ふ、冬海…?」
 上ずりそうな声を無理矢理に落ち着けて、土浦は冬海を見下ろした。薄暗い中に、白い肌が浮かび上がる。それを、また稲光が照らした。
「や……ッ!」
 コートを掴んだ手に、一層力をこめて、冬海はぎゅっと目をつぶる。竦めた肩も、細い。
 土浦は息を飲んだ。冬海を苦手にしていたのは、こういった『女の子らしさ』が原因のひとつだった。土浦にとって『女の子』は面倒くさいものであったのだ。火原のように『女の子』に夢を見ることもできなかったのは、姉がいたせいでもあったが、元来の性格でもある。少なくとも、冬海のような『女の子』は、自分が好きになるタイプではないと思い込んでいた。実際、今まで土浦が気になった異性は、どちらかといえば日野や天羽タイプだった。断じて冬海のようなタイプではない。
 落ち着け、と土浦は自身に言い聞かせる。冬海が突然こんなことをしたから、その驚きに脈拍が速くなっているだけだ。動悸がするのは、ただいつもと状況が違うからだ。
 そう言い聞かせるものの、この相手が日野や天羽であったのなら、無理矢理に引き剥がしているだろうことも予想がついた。冬海だから、引き離せないでいる。小さな身体、おどおどとした内向的な性格。今までは苛立ちの対象でしかなかったものが、鼓動を早める原因になっていく。
 薄い肩に、手を置いた。びくり、と震えるものの、冬海は土浦の胸から顔を上げない。恐怖に震える背を抱き寄せれば、抵抗もなく身体が密着する。冬でよかったと、土浦は安堵の息を吐いた。夏服でこんなに密着したら、それこそたまらない。
 自分の心境の変化に戸惑いつつも、土浦は仕方がないと苦笑した。エレベータの復旧を望んでいるのかどうなのかも、わからなくなってくる。
 混乱する感情の中で、ただひとつ確かなのは、腕の中の存在が大切だということ。それだけだった。





閉じ込められるっていうと、あとは観覧車くらいしか思い浮かばなかった。リクエストが付き合う前だったので、観覧車は恋人たちのスポットだよね! と却下になりました。
焦る土浦…いかがでしょうか。楽しんでいただければ幸いです。
リクエストありがとうございました!
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