「泣くなよ」
困り果てて言うと、冬海はすみません、と震える声で謝った。
涙が止まらないのだろう。
躊躇いつつも上げた瞳は潤んでいて、それに誘われているような気になり視線をそらす。
かわいくて、大事にしたい。
それと同時に、すべてを自分のものにしたいとも思う。
叶うはずのない願望は凶悪で、だからこそ押しこめているのだけど。
こうして無意識に煽ってくる冬海にその箍が外れそうにもなる。
「ああ、もう畜生」
心のすべてを持っていかれているのは、こちらのほうだ。
負けたくないと持ち前のプライドがいらない感情を逆なでするけれど、到底勝ち目などないのだ。
「……先輩?」
細い声が呼ぶ。
耐えきれなくなって、その柔らかな身体を抱く。
驚いたように冬海が目を見開いて、そこから涙の名残が落ちた。
それを舌で掬い取るようにすると、泣いて赤くなっていた目尻が別の意味で赤く染まる。
「せ、せん……!」
「涙、止まったろ?」
笑いながら音を立てて口づければ、冬海の顔は驚くくらいに赤く染まった。
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2008.04.17‖コルダ:土浦×冬海