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2017.10.23‖
ナイ亜貴



「………ッ! いい加減にしてください!」
 亜貴の声に被るように、乾いた音が響いた。
 呆然とこちらを見た乃凪の頬が赤い。手が熱くて痛い。
 それ以上に胸が苦しかった。
 目の奥が熱い。それを堪える。視界がわずかに歪んだけれど、真っ直ぐに乃凪を睨む。
 何度、同じことを繰り返せばいいのだろう。
 好きの種類にはいろいろあって、亜貴はおそらく『恋』という感情で従兄の内沼を見ていた時期がある。おそらく、というのは、初恋の相手である内沼を亜貴の想い人だと思いこんだ人たちが周囲にいて、それに流された可能性も否定できない、とただそれだけの否定要素なのだけど。
 そして、乃凪もそう思っていた人たちの一人だ。
 乃凪はそんな亜貴を応援してくれて、励ましてくれて、だから亜貴は乃凪には全幅の信頼を置いていた。
 そんな彼に亜貴が向けた感情は、信頼であり、憧れであり、ひどくできた人に対する嫉妬でもあったわけだけど、それを鼻にかけることをしない乃凪に、悪感情を持ち続けるのは至難の業だった。
 整った容貌で優しく微笑まれ、安心感のある甘い声で大丈夫かと問われれば寄りかかりたくもなる。
 そうでなくても、乃凪は優しいのだ。
 内沼への失恋が決定し、傷心の亜貴を慰めてくれたのは乃凪だ。図書館での告白から、亜貴の中の恋心は急激に育った。それは内沼ではなく、乃凪に向かったのだ。
 だから。
 だから亜貴は、想う気持ちを包み隠さず乃凪に伝えた。
 その気持ちを疑われることなど考えもせずに。
 乃凪にもらった言葉に後押しされて、それを口にした。
 なのに困ったように、乃凪は笑った。
 告げられた言葉は拒絶で、亜貴の目の前は真っ暗になった。
 けれど信じてほしくて、何度も、何度も、最後はもう意地になって、同じ言葉を尽くした。
 最後には根負けしたような形だったけれど、乃凪は微笑んでくれたのに。
 ドン、と乃凪の胸を叩く。
「………ッ」
 乃凪が鑪を踏んで蹌踉けた。
「どうして、今さらそういうこと、言うんですか……!」
 亜貴の言葉を、信じてくれていないと知らせる言葉が乃凪から漏れた。
 どうして。
 ぐ、と唇を噛み締める。
 馬鹿みたいだ。
 目の前の相手を好きなのは、自分だけみたいだ。
 苦しい。
 つらい。
 悲しい。
 乃凪の胸を壁に、亜貴は腕をつく。頭のてっぺんをそこに押しつけるようにして、足元を見下ろした。
 視界にある上履きが歪む。
 けれど涙なんて、卑怯な手段のようで流したくなどなかった。
「信じて、くれないなら、どうして、頷いたんですか……」
 声がかすれる。
 喉がつまる。
「何で、好きだなんて、言ったんですか」
「依藤さ……」
 肩の付近に、乃凪の熱を感じる。
 優しい乃凪は、きっと宥めてくれるのだろう。
 それがわかって、亜貴は勢いよく身体を起こした。乃凪から距離を取る。
 困ったように眉尻を下げる乃凪を睨み上げて、唇を引き結んだ。
「私のことが好きじゃないなら、私の言葉が信じられないなら、触らないでください」
 もう何度も、伝えているのに。
 あなたの側にいれば、幸せで、嬉しくて、ドキドキして。
 知っているなら、いっそ教えてほしい。
 これが、この感情が恋ではないなら、何だというのか。
 揺れる視界の先で、乃凪が動いた。
 大きな手が、肩を抱く。
 ぐ、と力を込められて、逃げようとした身体を抑えられた。
 細く見えて、乃凪は十分男だ。力の差は歴然としている。逃げられるはずもなく、亜貴はただ黙って捕らえられる。
「………ごめん」
 呟くような謝罪が耳元に落ちる。
 息が止まる。その謝罪は、どういう意味なのか問いただしたいのに、声が出ない。
「ごめん」
 二度目の謝罪。
 力一杯抱きしめられて、その腕から抜け出せない。
 離れたい気持ちと離れたくない気持ちが混ざって、何がなんだかわからない。
 乃凪が謝る意味も考えたくない。
 堪えていた涙が落ちた。頬を生温い雫が落ちる。
 乃凪の手が、亜貴の顔にはりついた髪を直していく。滲んだ視界にみとめた乃凪は、困ったような嬉しいような顔で笑っていた。
 その表情の意味を、乃凪ははっきりと口にする。
「………もっと、俺は自惚れてよかった?」
 唇が震えて声が作れない。頷くことで意志を伝えようと、何度も首を縦に振る。
 乃凪を好きだという気持ちが暴走する。目に見える形で伝えられるならいいのに。
 頭を優しく抱かれる。
「泣かせてごめん。疑ってごめん。不安にさせて、ごめん」
 コツリと額を合わせて、乃凪が囁く。
 温かな体温に涙が止まらない。ぼろぼろと落ちる涙に、乃凪の手が何度も頬を滑る。
「……君が、好きだよ」
 乃凪のその一言に、また涙がこぼれていく。
「わ、たし、も……」
 しゃくりあげて、涙も止まらないぐしゃぐしゃな顔のまま亜貴は笑う。
 笑って乃凪を見て、また笑った。
「せんぱいが、すきです」
 もう疑わないで、と亜貴はただそれだけを願う。




2007.09.11up
同じテーマで何度話を書けば気がすむのか、この人。
でも、書きたかったものに一番近いものがやっとできました。
私は亜貴ちゃんに乃凪を殴ってほしかったんだな、きっと。
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2007.09.11‖TAKUYO
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