「踊ってくれないか?」
コンサートの舞台に上がったままの衣装で、冬海に告げる。
見つけた姿に駆け寄って、一言。
「……え?」
ただでさえ大きな瞳が、零れんばかりに見開かれた。
「お前と、踊りたい」
言えば、見る間に白い肌が赤く染まる。
顔と言わず、首と言わず、腕と言わず、全身が。
恥ずかしいのか、冬海は俯いた。それもいつものことだ。
短い髪からのぞいた耳も赤い。
ぎゅ、と手を握りしめて、それが震える。
細い肩も震え、それが恐れではなく羞恥なのだと、その血に染まった肌が知らせる。
そんな初心な仕草に、心が揺さぶられて。
「冬海」
答えを促すように呼びかければ、その赤い顔が上がった。
どうしたらいいのかわからないように、その目がさまよう。
ひた、と見つめれば、また恥ずかしそうに頬を染める。
ああ、もうどうしてくれよう。
「そんな反応すると、うぬぼれるぞ?」
心底困る。どうしたらいい。
愛しさに抱きしめたくなって、けれどこの場でそれは憚られて。
手にしたコサージュを、彼女の前に掲げてみせる。
この花を、その胸元につけさせてほしい。
小さなこの黄色の花束を、その胸に抱いて。
そして、俺を見て笑ってくれ。
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2007.09.07‖コルダ:土浦×冬海