じっと、手を見る。
正確には手ではなく、指を。
小指の先から赤い糸は見えない。この先には誰がいるのだろう。
「日野、どうかしたのか?」
先生がそう尋ねて、不思議そうな顔をした。
糸がこの人に繋がっていればいいのに、と思う。
「何でもありませんよ」
考えていたことを振り切って言えば、先生は困ったように笑った。
「何でもないって顔じゃなかったけどな」
「……言ったら、先生が困るから」
にっこり笑うと、諦めたように大きなため息をひとつ。
先生はゆっくりと笑って、そしてその手が頭に伸びた。
ぐしゃぐしゃと髪をかき回されて、けれどそれが嬉しい。
金澤先生の指は長い。
その指にまとわりついた髪のように、小指に絡んだ糸が絡んで絡んで、絡みついて解けなくなればいい。
先生を見上げて、私はただそう願った。
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2007.09.07‖コルダ:金澤×日野