隣で必死に数学のテキストとにらめっこしていたはずの君の頭が肩に落ちてきて、そろりと覗くと難しい顔をして眠っている。
ノートを見れば問題の途中で、揺り起こそうとしたけれど、止める。
君の長い髪の感触が腕に伝って、君と俺との距離の近さを物語る。
起きているときでは、こんなに近づけたりしないから。
そう考えて、苦笑した。
本当に度胸も甲斐性もなくて嫌になる。
君を内沼のように下の名前で呼ぶことも、近づいて触れることも躊躇って。
なのに大事だからと言い訳をして、何一つ行動もしないくせに俺ばかりを見てほしくて。
独占欲ばかりが一人前で、それこそどうしようもない。
君がいてくれて、君が笑ってくれて、君が幸せなら、それでいいはずなのに。
「……な…ぎ、せんぱ……」
物思いにふける耳に、断片的な君の声が聞こえる。
そのわずかな音で、幸せになれるなんて本当にどうかしている。
ふわりと微笑んだ君を見て、胸の内が暖かくなる。
知らず、俺も微笑んだ。
それは自嘲でも苦笑でもない。ただ幸せに満ちた笑み。
君が、俺の幸せを運ぶ。
だから、もっと側にいて。
PR
2007.09.07‖TAKUYO