「姉さん」
そう呼んでくれていた人が、目の前にいる。
決して、この手には入るはずのなかった人。
血によって離れるはずのない人が、ほしくてほしくてたまらなかった。
あの歪んだ愛情を、たった一言が打ち砕く。
弟ではないとあの言葉は告げた。
それは断罪のようでも、救いのようでもあった。
私とあなたの間には、もう何もない。
何もないからこそ、始められる関係がある。
私は、それがほしかった。
願って。
願って、願って願って、けれど叶わないことを知っていたのに。
あの一言が、どれだけ嬉しかったか、あなたにわかるだろうか。
「……陸」
大きく逞しい身体。
抱きしめても、もう誰も咎めたりしない。
優しく微笑みを刻む唇。
それにこの感情を持って触れても、もう何も障害はない。
やっと、やっと始められる。
願って叶って、そして。
そう、ここから。
私はきっとあなたを離せない。
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2007.09.07‖その他