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2017.10.23‖
土浦の思いつきに振り回される冬海ちゃん



「ほら」
 冬の公園のベンチに座っていた笙子は目を瞬かせながら、土浦の差し出してきた紙袋を受け取った。白の薄い紙でできている紙袋はじんわりとあたたかく、笙子の指を熱が侵蝕していく。口を開くと、もあ、と水蒸気とともにあまいかおりが立ちのぼった。湯気のなかから姿を見せたタイヤキをのぞきこんで、土浦はふたつ寄り添ったそれをひとつずつ指さしてみせる。
「こっちがつぶあんで、こっちがクリーム。好きなほう食べろよ」
「え、あ……で、でも、土浦先輩が買ってきてくださったんですから、先輩がお先に……」
 と、立ったままの土浦を見上げると、苦笑して頭を撫でられる。
「いいから選べって。俺といるときくらい、わがまま言えよ」
 優しく微笑まれて、頬が熱くなる。つきあいはじめてから……、いやその前もだったが、土浦はとても優しくて、相思相愛の相手にそうされることがはじめての笙子は、とにかく恥ずかしくて嬉しい。土浦の優しさが自分に向いていることが泣きたくなるくらい切なくて、胸がどきどきする。
 真っ赤になったほおを隠すように、手にした袋に目を落とす。ここでまた「先輩が選んでください」と返してしまうのは、土浦の気持ちを無下にしてしまうようで申し訳ない。笙子は考えて、はっと顔を上げた。
「あの先輩。両方とも、はんぶんこずつ……しませんか?」
 言って、紙袋から湯気を立てているタイヤキを片方を取り出した。そして、胴体の真ん中ほどでちぎってわける。中身はクリームだった。トロリとしたクリームがこぼれないよう、慎重にその片方を土浦のほうに差し出すと、彼は呆気にとられたような顔をした。ついで、いたずらを思いついた子どものように目をかがやかせ、土浦は腰を折った。膝に手を突いて、ベンチに座った笙子に視線を合わせる。真正面からのぞきこまれて、笙子は瞬きを繰り返した。
「食わせて」
 楽しそうな声色で言ったかと思えば、あ、と口を開ける。笙子は驚きに目を丸くし固まった。じわじわと身体の温度が上がっていく。手にしたタイヤキをわずかに握りしめてしまい、指についたクリームにそれ以上の動作をこらえる。土浦は口を開けているのに笑っているのがわかる。こうなると、引くことがないのも経験ずみだ。土浦はときおりこうやって笙子を困らせる。けれど不快ではないのは、それだけ土浦に溺れているせいだろうか。
 ふるふると震える手で、半分にしたタイヤキを土浦の口へと運んでいく。視線は自然と下を向いてしまって、タイヤキから伝わる感覚だけで、土浦がそれに食いついてくれたことを知る。ほっとしながら手を離そうとすると、手首を強い力でおさえられた。
「せ…、せせんぱ……」
 驚きに顔を上げ、恥ずかしさのあまり口のまわらない笙子に、土浦はにやりと笑う。震えた手で差し出してしまったがために、土浦の唇のはしにはクリームがついていた。それを舌で器用にぺろりとなめて、ついでのように笙子の指についていたクリームもなめとっていく。
「…………!」
 ぬめった感触にびくりと身体を揺らすと、おかしくてたまらないというように、土浦はくつくつと喉の奥で笑いつづける。恥ずかしさに声もなく、口をぱくぱくさせているだけの笙子の手からタイヤキの片割れを奪い取ると、なおも笑いながら笙子の口もとにそれを差し出した。
「ほら、俺も食わせてやるよ」
 口開けろ、といかにも楽しそうな土浦に、笙子はますます自分の体温が上がるのを自覚した。
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