遙か5/桜智×ゆき
「桜智さんの好きな食べものって、なんですか?」
「え? ……そうだね…、あまり、考えたことがないかな」
ゆきが尋ねると、桜智は首をかしげて答えた。その口から返された答えは望んだものではなく、少しだけ難しい顔で再度念を押すように尋ねる。
「好きなもの、ないんですか?」
「うん……。そう、特に…というのは、ないかな」
桜智の埒もない答えに、ゆきは別の質問を投げる。
「それじゃあ、嫌いなものは?」
「嫌いなもの? ………嫌いなもの…も、ないかな」
一瞬考えたあと、桜智はそう答えた。実のない答えに、ゆきは落胆したように視線を落とす。
「……そうですか。残念」
「え?」
「桜智さんには、いつもあちこち調べてもらっているでしょう? だから好きなものを作って、帰りを待っていたいなって思ったんだけど…」
手を前で組み、手持ち無沙汰そうに動かしながら、ゆきは見るとはなしにそれを見ている。その頭を見下ろして、桜智はばっと口を手で覆う。
「…………ッ」
「桜智さん?」
不思議そうに見上げてくるゆきに、桜智は頬を染め、困ったように視線をさまよわせた。
「う、嬉しい…よ。キミが、その……、私のために、なんて。それだけで、すごく嬉しい」
「……本当ですか?」
「うん、もちろんだよ」
今度の問いには、はっきりと答えた桜智を見上げて、ゆきは満面の笑みを見せた。
2011.03.11up
桜智とEDを迎えてから、現代に戻ってからのイベントで食べ物の好き嫌いの会話があって、桜智が好きなものも嫌いなものも特にない、みたいな返答をしていて、それって手料理イベントのフラグじゃん!何折ってんのばかじゃないの、桜智!と思ったので書きました。
バカな桜智が愛しいです。
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2011.03.11‖その他