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2018.10.20‖

#05

ふたりでお菓子作り



 半袖の白いシャツから伸びる、すらりとした腕。北国育ちだからかその色は白いけれど、別段細かったりやわらかそうだったりはしない、しっかりとした男の腕だ。外見の穏やかさを裏切ってアウトドア派の八木沢の腕には、くっきりと腱が浮き上がって、女性のようなたおやかさもない。
 そんな腕が、目の前で器用に鍋のなかの葛を練っている。
 東金はシャツと腕との境目を見るともなしに視線をやりながら聞いた。
「今日は何を作るんだ?」
「葛まんじゅうだよ」
 答える八木沢に、東金は満足そうにうなずいた。
「ユキの葛まんじゅうはうまいからな。……いや、ユキの作るものはなんでもうまいが、この時期にはやっぱり水菓子だな」
「うん。そうだね、千秋」
 東金の言葉を受けて、八木沢は葛を練っていた手を止める。鍋のなかをのぞく八木沢につられて、ひょいとのぞきこんでみると透明になったゼラチン状のものがあった。このぶよぶよとしたかたまりが、あのうまい和菓子になるのだと期待にわくわくしながら勢いよく顔を上げ、東金はにこにこしながら手伝いを申し出る。
「手伝うことはないか?」
 東金のようすに目をぱちぱちとさせて、八木沢は少し考え込んだ。そして目についたのか、側に置いてあった大きめのボールを手渡して言う。
「このボールにいっぱい、氷水を作ってくれる?」
 子どもでもできそうな手伝いだったが、東金は意気揚々とボールを受け取った。冷蔵庫からがらがらと氷を入れ、洗い場にボールを置き勢いよく蛇口をひねって、できたぞと胸を張る。
「ほかには?」
「じゃあ、僕がいいと言ったら、おまんじゅうを水から引き上げてくれる?」
「ああ、わかった」
 東金は大きくうなずき、やる気満々で穴あき玉じゃくしを手に取った。その様子にくすくす笑いながら、八木沢は鍋にあった葛を一握り手に取って、すでに丸めて置いてあった餡を中に包み込んだ。そのままぎゅっと手をにぎって、人差し指と親指の隙間から押し出して葛をちぎると、そのまま氷水のなかへぽちゃりと落とす。
 そういえば完成品は何度も見ているが、こうして作っているところをしっかり見るのははじめてかもしれない、と東金は思った。こんなふうに八木沢が何かを作っている姿を見ていられるのはいいな、と気分がよくなる。
 そんなにむずかしそうでもない一連の動作で、規則正しくまんじゅうを作っていく八木沢の手際のよさに、東金は興味津々で場所を移動した。やりたい、という欲求には逆らえなかったのである。
「俺にもやらせろ」
 だから言うが早いか、東金は手をのばした。八木沢がしているように葛のなかに手を突っ込んだ。
 次の瞬間、響いたのは絶叫。
「〜〜〜〜!!!!! あ つ い !」
「千秋!」
 反射的に葛から抜き取った東金の手を、八木沢がつかんで氷水のなかに浸す。八木沢は心配と怒りの中間で、眉を寄せて東金を睨んだ。
「千秋には、別のことを頼んだでしょう?」
「い…いや、だって、ユキが簡単そうにやってるから……」
「だってじゃない。熱いって説明しなかった僕も悪かったけど、さっきまで火にかけてたんだからそのくらいわかるでしょう? それに千秋は料理なんかしないんだから変に手出しをしない!」
 怒られて東金は眉を下げた。
 八木沢の言うことはもっともで、だけど湯気のほとんど立っていないそれをこんなに熱いものだとは思えなかった。料理をしないからそうなのだ、という八木沢の弁にもうなずくしかなく、東金は叱られた犬のように身体を丸めた。
「悪かった……」
 ぼそりと小さく謝ると、八木沢はちらりと視線だけを寄越して、東金の謝罪よりももっと小さな声で呟いた。
「……千秋の指は、ヴァイオリンを弾く指なんだから、大事にして」
「……はい」
 折り目正しく返事をすると、八木沢は仕方がないなぁというように苦笑する。その表情に、東金は妙な胸騒ぎを覚えて視線をそらした。




2011.04.15up
基本的に何もできない千秋さまを八木沢は体よく転がしてればいい。
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