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2017.11.18‖
 こんな緊張、一生のうちに一度きりでいい。



「あ、あの、そんなに緊張なさらなくても」
 見上げてくる冬海に、土浦は顔をしかめてみせる。
「お前なぁ。今、緊張しなくていつするんだよ」
 きっちりスーツを着込み、ネクタイを喉もとまで締める。背筋を伸ばした土浦は、文句なしに格好いい。もともと大柄で体格のいい土浦は、何を着ても似合うが今日は気合いが違うのか別格だ。見惚れそうになって、冬海は上げていた視線を下ろした。
「で、でも…今日の挨拶は、その、礼儀的なもので…」
「あのな、OKもらえるかもらえないかじゃないんだよ」
 大きく土浦は息を吐く。ビクリと身体を震わせる冬海が視界に入った。
 冬海を見下ろす。高校時代から小さかったが、その頃からあまり変わらない。俯きがちに目を伏せる冬海の手を取って、土浦は笑う。
 これからもずっと一緒にいたいと思ったから、その覚悟をした。
 星奏学院という学校で出会った。最初は何てつきあいにくいタイプの人間だろうと思ったものだ。けれど彼女を気にするようになって、恋人と呼ばれるものになって、高校を卒業して、それでもつきあいは続いて。
 それまでとはあまりにかけ離れたタイプの冬海に惹かれた理由なんて、もうわからない。
 ただ、冬海のことを大事に思っている気持ちだけは確かだ。これに一生をかけられるのなら、その先を見てもいいのではないかと思ったのだ。
「お前を産んで育ててくれた人たちに、お前とこの先一緒にいていいのかどうか聞きにいくんだぜ?」
 緊張しないほうがおかしい、と土浦は冬海の手を握りしめる。大きな手に包まれて、冬海は耳を赤くした。いつまでたっても慣れない、その初心な反応がかわいいと思う。
 二人は手を繋いだまま、慣れた道を歩いていく。
 最初にここを一緒に歩いたのはいつだっただろうか、と考える。
 冬海の家は土浦の家から遠い。わざわざ訪れなければ来ないような場所で、だから初めて駅に降り立ったときにはひどく緊張した。その日は初めて冬海の家に行く日だったから。そのときの自分を思い出すと笑ってしまう。そこで初めて冬海の両親に会った。とてもいい夫婦だと感じた。
 それから数年がたち、土浦は当時と同じ道を歩いている。
 そして、また緊張しているのだ。
 あのときと違うのは、土浦の社会的地位と心構えだろうか。
 結婚を考え始めたのはつい最近で、しかし二人の関係の先を考えると、それ以外には思い浮かばなかった。
 一緒にいたい。できれば長く、隣を歩いてほしい。
 口にするのは気恥ずかしくて、けれど言わなければ伝わらないのは自分が誰よりも知っていて。
 結局、高校時代と変わらない告白の仕方をしてしまったような気がする。ぶっきらぼうに、伝わるのか伝わらないのかわからない口調で、一言だけ。
 その言葉を聞く冬海のほうがよっぽど成長していて、零れた言葉に目を見開いて赤面していた。昔だったら聞き返してきたところだ。それを聞き逃さず、意味を捉え間違えず。
 瞳に涙がたまった。頬を伝う涙をきれいだと思ったのは、何度目だろう。
 手を伸ばして、涙をぬぐって、キスをした。
 愛しくてたまらない。
 冬海を抱きしめて、もう一度告げた。
「結婚しよう」



「大丈夫ですか? 先輩」
 物思いにふけった土浦を、冬海が心配そうに見上げてくる。
 土浦は少し眉を寄せて、足を止めた。同じように足を止めて、冬海が首を傾げる。
「お前さ、いい加減、それやめないか?」
「え?」
「その、先輩っての」
「…あ」
 土浦は冬海を見下ろす。ただ見つめて待っていると、冬海は真っ赤になって俯く。この仕草は何年たっても変わらない。
「あの、えと…」
 かわいくて、愛しくて、抱きしめたくなる。
「りょうたろう、さん」
 ひらがなで聞こえたそれに、頭の後ろを殴られたような衝撃を受ける。
 ああ、けれど。
 これからも彼女が隣にいてくれるなら。
 ふわりと笑う冬海の手を握りしめて、土浦はまっすぐに冬海の家を目指した。





たけださまリクエスト品。
結婚前に両家に挨拶というよりは、プロポーズっぽくなってしまいました…。すみません。

リクエストありがとうございました!
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