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2017.10.23‖
2011年冬海誕。漫画設定。
できあがってるバカップル。



「なあ、本当にこんなんでいいのか?」
 土浦は不安になってたずねた。しかし冬海はふんわりと笑ってうなずく。
「は、はい。お話を聞いたときから、私も食べてみたいなって、ずっと思ってたんです」
 そうはっきり言われてしまうと、土浦もそれ以上は言えなかった。ふうと息を吐き出して、台所に向かう。
 今日は恋人である冬海笙子の誕生日だった。なにがほしいのか、とたずねた土浦に、冬海は予想外のこたえをよこしてきた。
 その結果が、これだ。
 眼の前に揃っているのは、たまご、ハム、それにネギなど、どの家の冷蔵庫にもありそうな食材ばかり。それに加えて冷ご飯。
 冬海は以前、学内コンクールメンバーで行った合宿で、土浦が男性陣に振るまったチャーハンが食べたいと、そう言ったのだ。情報源は聞かなくてもわかる。火原だ。
 そのため、土浦は今日一日の家事と引き換えに家族を家から追い出すことに成功した。冬海を見せたくないとか紹介したくないとかいうのではなく、ただ単にのちのちまで冷やかされからかわれるのが嫌だったからだ。代償は安くないが、精神上の安定を考えると妥当なのかもしれない。
 土浦は苦笑を浮かべて、調理にかかった。




 小気味よくネギを切っていく土浦の背中を見ながら、笙子はとてもしあわせな気分になっていた。
 学内コンクールメンバーで行った合宿のあと、火原が何度か「土浦のチャーハンが忘れられない」とつぶやいているのに出会った。そのときにはまだ土浦はこわい先輩だったので、あまりそうとは思わなかったのだが、恋人になって土浦の作る料理がおいしいと噂を聞くたびにいいなぁとうらやましく思っていたのだ。
「土浦先輩の手料理が食べたいです」
 だから誕生日プレゼントはなにがいいかとたずねてきた土浦に、笙子はそう答えた。チャーハンを指定したのは、やはり火原のことばがどこかに残っていたからだろう。
 笙子は料理をしない。それは楽器を扱うものとしての配慮であったし、ただ単に機会がなかっただけでもある。家では母や家政婦が家事をしてくれているので、お嬢様として育てられた笙子には無関係のことだったのである。
 こんなふうに料理をしているひとを見ているというのは新鮮でもあった。それも今日は笙子の誕生日で、土浦は笙子のために料理を作ってくれているのだ。これがしあわせでなくてなんだというのだろう。
 具材を切り終えた土浦が、コンロにフライパンを乗せて火をつける。それが煙が立つほどじゅうぶんに温まったのを確認して、多めの油を垂らした。そんなに温めて大丈夫なのだろうかとおろおろ見守る冬海のまえで、土浦はそんなことはお構いなしに卵を投入した。じゅわっと卵が油をくぐる音のあとに、ぱちぱちと高い音。卵がまだ半熟のところへすぐさまご飯を入れたかと思うと、ガツガツと荒っぽくバタービーターでご飯をばらしていく。そうこうしているうちに、ハム、ネギと具材がフライパンのなかに入れれられていき、調味料で味付けされる。最後にざっと鍋を煽って、土浦はさっさと盛り付けに入ってしまった。具材を切っている時間のほうが長かったのではないかというほどだ。
「ほら。できたぞ」
 皿に盛られたチャーハンは、ほかほかと湯気を立てて、おいしそうなにおいをさせている。土浦は驚くべき手際で、しかも一度も味見をせずにこれを作り上げてしまったのだ。純粋に感動して、笙子は目をかがやかせる。
「すごいです! こんなに早くできてしまうんですね…!」
「だからこんなもんでいいのかって聞いたんだ。まあ、お前がよろこんでくれるなら何でもいいさ」
 二人分のチャーハンをテーブルに乗せ、土浦は笙子にスプーンを手渡した。
「烏龍茶って日本茶とおなじ淹れかたでいいんだよな?」
 そう言いながらも、もう急須にポットからお湯を入れている。日本茶も烏龍茶も紅茶もおなじ茶葉だ。大体にして葉にお湯を注げば味は出るのだから、細かい作法はあるかもしれないが大差はないだろう。大雑把なやりかたに笙子はくすくすと笑う。なんでもないことが楽しくてたまらない。
「お前は冷めないうちに食っちまえ」
「はい。いただきます」
 湯のみを探していた土浦が言って、笙子は手を合わせた。
 スプーンでひとくち分をすくって、口のなかに入れるとふわりと焦げたしょうゆのにおいが鼻に抜ける。ぱらぱらのご飯も、しゃきしゃきするネギも食感が違っておいしい。
 湯のみに烏龍茶を注ぎ、土浦が笙子の正面に座った。笙子はおいしさとうれしさに頬をゆるめた。
「とてもおいしいです。すごいです、土浦先輩」
「いや…、なんだ。あのときもほめられたが、なんだかな。チャーハンなんて難しいもんでもないんだが…」
「で、でも、私は作れないですから。その、今度、教えていただいてもいいですか…?」
 笙子が提案すると、土浦はチャーハンを口に突っ込んで少し考えた。ぶらぶらと行儀悪くスプーンを揺らして、いいことを思いついたというようににやりと笑う。
「わかった。教えてやるから、次の俺の誕生日にはお前の手料理食わせろ」
「……え?」
「少なくとも一品、がんばって覚えろよ?」
 土浦が笑う。
 ことばの意味を考えて、笙子の動悸が激しくなった。それは来年の土浦の誕生日まで一緒にいられるという約束だ。うれしくて、ただでさえゆるみきっている顔がさらに力をなくす。
「はい…!」
 土浦にうなずき返しながら、こんなふうにしあわせに包まれる日常が一番のプレゼントだと笙子は思った。
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