「日野」
練習室に向かうのか、それとも屋上か。
音楽科棟で見つけた背中に声をかける。
「月森くん」
「練習か?」
「うん、練習室で。さすがに寒くなってきたから屋上はちょっとね〜」
柔らかに笑った彼女の隣に並んで、一緒に廊下を歩く。
「そういえば、クリスマスコンサートの曲は決まったのか?」
「それなんだよねー。クリスマスだからそれっぽい曲にしようかと思うんだけど…」
声が弾んでいるのがわかって、苦笑した。
「悩んでいるのに楽しそうだな」
「だって、クリスマスだから」
本当に楽しそうなので、こちらも嬉しくなってしまう。
「駅前のイルミネーションとか、街中でかかってる音楽とか、ちょっと浮かれたりしない?」
あ、と言う顔をして、こちらを見る。
「月森くんは、あんまりこういうの興味ない?」
「いや、そんなことはない」
クリスマス自体には興味はないが、楽しそうな彼女を見るのは悪くない。
微笑んで返せば、ほっとしたように胸をなでおろす。
「ホントに? よかったぁ。それじゃ選曲手伝ってほしいなぁ」
「俺が?」
「うん。やっぱり舞台慣れしてる人のほうが、そういうのは上手かなって」
ダメ? と上目遣いに懇願されて、仕方がないな、と苦笑した。
こんな風に素直な君だから、こんなに胸をいっぱいにするのだろうか。
口元に笑みさえ浮かべて頷いた。
「ああ、協力しよう」
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2007.04.04‖コルダ:その他