KaNaSiさんで書いたものの別バージョン。
脳内ではもっと乃凪がかっこよくなるはずだった。
何でこんなにヘタレなのか、乃凪。
脳内ではもっと乃凪がかっこよくなるはずだった。
何でこんなにヘタレなのか、乃凪。
「楽しかったですね!」
沢登主催のクリスマスパーティが終わった帰り道。亜貴は冷たい空気の中、思い切り息を吸い込んだ。
「………あ、うん…」
げっそりとした乃凪の返事に、亜貴はあっと口を押さえる。
「な、乃凪先輩は、お疲れ様でした、な感じでしたけど」
「いや、依藤さんが楽しかったなら、いいんだ」
疲れたように答えながらも、乃凪はその顔に笑みを刷いた。ひどく優しげで、ドキドキする。クリスマスの夜だというのも、拍車をかけているような気がする。亜貴は胸の動悸がばれないように、早口で答えた。
「沢登先輩のミニスカサンタは、ちょっとびっくりしましたけど、楽しかったですよ」
亜貴は乃凪を見上げる。優しげに微笑んだままの乃凪は、ひどく柔らかい視線で亜貴を絡め取った。足を止めて、亜貴は首を傾げる。
「…どうしたんですか?」
「ええと、…………メリークリスマス」
ポケットから出てきた乃凪の手には箱が握られていて、亜貴は目を丸くした。
「え? ……え?」
「クリスマスプレゼント」
何でもないことのように乃凪は言う。亜貴はぎゅっと胸の前で手を握り締めた。どうしよう、嬉しい。
けれど、はっと気づく。亜貴は乃凪へのプレゼントを持っていない。パーティでプレゼント交換があるからと、そればかり用意してしまって肝心の乃凪へプレゼントを用意するのを忘れてしまった。付き合いはじめてのクリスマスだというのに。
「先輩、私、何も持ってなくて…」
「いいからもらって? 君からもらおうとか、そういうのじゃないから」
泣きそうになった亜貴の手を取って、乃凪はその上にプレゼントが乗せる。ぎゅっと手の上から包まれて、亜貴は恥ずかしさに俯いた。プレゼントもない、お礼も言わない、それでは駄目だと顔を上げた頬に、冷たいものが落ちる。視界に白いものが散らついて、亜貴は目を瞠る。
「雪……!」
「ああ、どうりで寒いはずだ」
乃凪も空を仰いだ。その横顔に、亜貴は言いようのない幸せを感じる。
「先輩?」
「ん?」
つま先立ちになって、顔を向けてきた乃凪の頬に触れる。
一瞬だけ触れあった熱は、あっという間に冷めるはずなのに顔が熱い。驚きに呆然とする乃凪に、亜貴は頬を染めて笑いかける。呆然としていたのは一瞬で、乃凪はふ、と笑って、強く亜貴の手を握り締めた。
「これ、プレゼントにしてもいいの?」
息が触れ合うような至近距離で問われる。
「え?」
「もう一回、ちょうだい」
唇が触れ合う寸前、乃凪が囁いた。
「ハッピーメリークリスマス」
幸せに満ちながら、亜貴は瞳を閉じた。
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2007.12.22‖TAKUYO