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2024.11.22‖
拍手ログ。
土浦×冬海。
お題:恋*5題 02
(お題配布元:桜雨 -Rain of Pink-



「……あ」
 聞こえてくるピアノの音に、笙子は足を止めた。どこからか聞こえてくるのはショパンだ。
 情熱的な、けれどどこか緻密で繊細な音が誰のものなのか、笙子にはすぐにわかった。
(……土浦先輩の、音)
 笙子はクラリネットを抱く腕に力をこめる。
 大きく強面の土浦を、ずっと怖いと思っていた。けれど困っていた笙子を助けてくれた土浦に、その印象は大きく変わった。
 それは当然なような気もするし、意外なような気もする。
 心に芽生えた感情は、今まで知らなかったものだったから困惑した。
 会えることが、言葉を交わすことが、音楽を一緒に奏でることが、構われることが嬉しい。
 そんなふうに感じるのは日野に対しても同じだけれど、土浦に対するときには、それに加えてドキドキと胸が高鳴った。
 全力疾走したときの鼓動と似ている。しかし泣きそうに嬉しい、というのはどうしてなのだろうかと、笙子は最近ずっと考えている。
 土浦が奏でているピアノの音はとても綺麗で、笙子はそれだけで泣きそうになった。
 どうしてこんなに胸が苦しいのだろう。
 どうしてこんなに土浦のことばかりを考えてしまうのだろう。
 笙子はぎゅっと、目を閉じた。
 この感情が、どう言われるものなのかはわからない。
 けれど。
 そう、土浦は自分にとって、とても大事な人になったのだと、それだけは確かだと笙子は瞳を開けた。
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