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2017.10.23‖
 夢だ、とそう思った。
 何もかもが現実ではありえないし、夢でしかありえないと思った。
 しかしつねった頬は痛みを訴え、あまつさえ目の前の人物はにこやかに挨拶をしてきた。
「こんにちは」
「こ…こんにちは、乃凪、先、輩……?」
 困惑しながら亜貴は挨拶を返す。
 どういうわけだろうと、何度も頭の中で考えるが、当然ながら答えはない。
 亜貴の目の前には、三人の乃凪がいた。



「…………ええと、状況を整理させてください」
 亜貴が申し出ると、三人の乃凪は一様に同じように困った顔をして首を傾げた。
「俺たちにも、よくわからないんだよね」
 低く甘い声がステレオで響いてくる。声のよさをこんなところで発揮しないでほしいと亜貴は思いながら、ぐっと堪える。
この状況にあって一番困っているのは、自分ではなく乃凪自身だ。
「とりあえず、どうしてそうなったのか、原因は考えてもわからなそうなので、時系列順に行きましょう。三人になっていると気づいたのは、いつ頃ですか?」
 亜貴が尋ねると、乃凪たちは顔を見合わせる。
「いつって言われても…」
「気づいたらこうなってたっていうか…」
「まず、この空間からしてよくわからないし」
 彼らは行儀よく順番に口を開いていく。
(これが葛ちゃんだったら、一斉に話はじめて、何を言っているのかわからなかっただろうな…)
 亜貴はそう思いながら辺りを見渡した。言われなくても、この環境はどうなのだろうかと頭を捻りたくなる。周囲には色とりどりの花が満ちあふれていて、香りも強い。それが延々と続いていて、障害物もない。遠くに見える地平線まで、花は咲き乱れており、亜貴はそこでようやく一人の人物を思い出した。
 間違いなく人外。ありとあらゆる世界の不思議も、彼の手にかかれば不思議でもなんでもなくなってしまうあの人を忘れていたなんて、余程混乱していたらしい。
 亜貴は大きく息をつく。
「…………沢登先輩の仕業なんでしょうか……」
 沢登の仕業であれば、話は簡単だ。あの人が元凶だ、というだけで、この空間に説明がつく。
 誰が、どうして、どうやって。それがわからないから気持ちが悪いのだ。せめて「誰が」という部分が「沢登が」という固有名詞に置き換えられれば、少なくとも「どうやって」という部分にも置き換えがきく。この空間を可能にするためのアイテム——異次元スカートを思い出して、亜貴は身震いした。
 沢登の仕業であるかどうかはともかく、この空間、そしてこの状況を打ち破るためにはどうしたらいいのだろうか。順々に乃凪を見るが、彼らに困った様子はない。疑問に思って、亜貴は口を開いた。
「……先輩、困ってないんですか?」
「ん?」
 三人が揃って亜貴を見る。声が多重に聞こえてきて、やっぱり心臓に悪いと亜貴はどきどきする心臓を抑えた。
「困っている、と言えば困ってるよ。でも騒いでもどうにかなりそうにないし」
「いろいろ考えてみたけど、こうなった原因がわからないことには、どうにもできないし」
「むしろ分裂したのが沢登や内沼や白原じゃなく、俺でよかったな、と」
 苦笑まじりに彼らは告げた。確かにそうかもしれないと考えてしまった亜貴の耳に、思いも寄らない三人の言葉が届く。
「…それに、ここには依藤さんがいるからね。依藤さんさえいれば、どこだって何だって構わないよ」
 一瞬、時間が止まったような錯覚を覚える。
 見上げた三人は、穏やかに微笑んでいて、過剰反応しそうな自分が間違っているような気さえする。
 しかし優しく甘い声に、耳が馬鹿になりそうだ。一気に頭へ血が上り、熱いと感じた頃には、もう既に顔は真っ赤になっていた。耳まで熱い。
 この人たちは、何て台詞を吐くのだろう。
「……依藤さん?」
 顔を伏せてしまった亜貴を覗きこむようにして、乃凪は心配げに尋ねてくる。
 ここにある花の強い香りに酔ったわけではなく、頭がくらくらした。何度も息を飲む。上手に呼吸ができなくて、亜貴は落ち着くようにと、自分に何度も言い聞かせる。
 そして決意したことを、ひとこと。
「絶対、元に戻りましょうね」
 だって、ここにいたら心臓がもたない。
 後半部分は胸に秘めて、亜貴は乃凪たちに顔を向けた。
 どこか困ったように笑う姿はそのままに、彼らは亜貴に手を差し伸べる。
 どの手を取るべきか迷って、亜貴は順番にその顔を見回した。




2008.03.20up
パニパレ阿弥陀提出作品。
本気でこのタイトルに決まったときは、どうしようかと思った。
乃凪は、亜貴ちゃんを無意識に振り回せばいい。
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2008.03.20‖TAKUYO
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