「かーげーとーきーさん」
背中から近寄って、ぎゅ、と首に抱きつく。
濡れ縁に座って梅を見ていた景時さんは、驚いたようにこちらを振り向いた。
「ど、どうしたの? 望美ちゃん」
「くっつきたくなったの」
「へ?」
「景時さんにくっつきたくなったの」
笑って言えば、ヘラリと景時さんの顔が崩れた。
二人で額をつきあわせて笑う。
穏やかな時間。
もう二度と、景時さんが苦しまないでいられるように。
一人きりになったりしないように。
景時さんの悲しげな顔が、頭をよぎった。
あんな顔を、二度とさせないために、私はここにいる。
ぎゅ、と首を抱く腕に力を入れた。
「たまにはねー」
「ん?」
「たまには、私が景時さんを幸せにしてあげられればなぁって、思ったの」
いつも、いつも。
もらうばかりで、何もしてあげられない。
だから、あなたが私を必要とするのなら、ただここにいればいいと言うのなら。
「いやだなぁ。望美ちゃんはいつも俺を幸せにしてくれるよ?」
「……うん」
その言葉が真実なら。
ずっと、あなたの隣にいよう。
「景時さん」
「ん? 何?」
こちらを振り向いた景時さんの頬に、小さく音を立ててキスをする。
そういえば、私からするのははじめてだったかもしれない。
「の、の、望美ちゃん!?」
ふふ、と小さく息が漏れる。
笑いたいのか、泣きたいのか。
幸せすぎてわからない。
「ずっと、一緒にいましょうね?」
PR
2007.05.17‖その他