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2024.04.25‖
拍手ログ。
金澤×日野。
お題:身長差カップルに5つのお題(お題配布元:Like a Rose Like a Butterfl



 階段を駆け上がって、踊り場で日野がくるりと振り返る。
 やわらかにひるがえるスカートに、短すぎるだろうと思う。目のやり場に困る。
「日野、俺はもう若くないんだからさ。いたわれよ、年寄りを」
「怠けすぎなんですよ、先生は」
 日野が笑う。それでも踊り場からは動かず、俺を待つ。
 一段一段、上がる。
 日野に近づいているのだと思うと、何故だか心が躍る。
 そういえば、こうして彼女を求めて階段を駆け上がったことがあった。
 あれはそう。彼女のヴァイオリンが認められた日。学内コンクールの最終日だ。
 踊り場まであと一段、というところで足を止める。
 不思議そうに日野がこちらをうかがう。
「先生?」
「お前さんのヴァイオリンがあれば、駆け上がれるのになぁ」
 笑う。
 あの音色があったから、俺はこの階段を駆け上がったのだ。年甲斐もなく、一直線に。
「どうしてこんなに好きなんだろうな」
 何がとも、誰がとも言わない。
 けれど伝わっただろう。その証拠に、見上げれば嬉しそうに微笑む日野がいた。
「どうしてでしょうね。私にもわかりません」
 頬を染め、はにかんで俯いた日野に、手を伸ばす。
 本当は、まだ触れられないのだけど。
 触れる。
 柔らかな肌の感触。少し上がった体温。愛しい彼女。
 自然と身体が動く。
 触れるだけの口づけに、ようやく日常が戻る。
「好きだよ、お前さんのヴァイオリン」
 日野を追い越し、階段を上がる。
「先生!」
 怒ったような、それでいて嬉しそうな叫び声。
 いつもに戻って肩越しに笑った。
「あとは卒業までお預けな?」
「セクハラ教師!」
 いきり立つ日野から視線を外して、前を向く。触れることができて嬉しいなんて、知られるわけにはいかなくて。
 だから、日野とは顔を合わせられない。
 こんなににやけてるなんて知られたら、どうしていいのかわからなくなる。
 卒業までなんて、我慢できないのは、俺のほう。
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