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2017.11.18‖
 その日、最高気温が40度を超えた。



「依藤さん、大丈夫?」
 日陰のベンチでぐったりしている亜貴に、乃凪はペットボトルを差し出しながらその顔を覗きこむ。隣に座り、その肩を亜貴に貸している状態だ。
「あ……、はい。………すみません…」
 小さくか細い声を出す亜貴は、いつもの明るい亜貴とは結びつかない。
 だが、この暑さでは参りもするだろう。テレビの中で天気予報のキャスターは、にこやかな顔で「今日も真夏日となるでしょう」とのたまった。すでに日光は凶器と化している。燦々と降り注ぐ真夏の太陽に、乃凪は目をすがめた。
 亜貴に視線を戻して、その額に触れる。
「ちょっと、顔色戻ってきたかな」
「本当に、すみません…。お役に立つどころか、逆にご迷惑をおかけしてしまって…」
 委員会活動をするのに人数が足りないとわかったのは、当日になってからだった。
 そもそも夏休み中に委員会活動をするというのがおかしい。けれど常軌、通常、標準という言葉を知らない我らが風紀委員長にそれを言っても始まらない。そんなことは長いつきあいでわかっている。
 だから乃凪はおとなしく学校へきたわけだが。
(内沼までいないとは思わなかったな…)
 そう、いつもなら文句を言いながらも委員会に顔を出す内沼までもがいなかったのだ。家の事情だとかなんとか沢登は言っていたが、要するにそこにいたのは乃凪だけだった。
 呼び出したはずの張本人は踊りながら会議室を飛び出し、それを追う気力もなかった乃凪ががっくりと風紀会議室でうなだれていると、そこに真朱が顔を出した。そして乃凪の手に何かを握らせながら言ったのだ。
「乃凪ー! 悪いんだけどさ、これ買ってきてくれない?」
 渡されたのは買い物リストで、それはズラズラと下に伸びている。
「………あの、これを一人で買いに行けと?」
 抗議した乃凪に、あーそうだなと笑った真朱が協力を求めたのが亜貴だったというわけだ。聞けば亜貴は真朱に呼び出されて、いろいろと手伝っていたらしい。
 こまごまとした事務用品から、用途のわからないものまで、リストにそって集めていく。偶然とはいえ、亜貴と一緒に過ごせるのは嬉しかった。買い物をしていても内沼と違って暴走しない。他愛もない会話をしながら普段よりも倍の速度でおよその物を買い終えた時、亜貴の足元がふらついた。
 荷物が多かったし、何よりも暑かった。疲れるのも当然で、でもいつもどおりに振る舞っていたから、反応が遅れた。掴んだ腕は熱く、指先に伝わる鼓動が異常に早い。
 錯乱する。
 こういうときは、どうすればいい。
 荷物を放り出して、亜貴の肩を抱く。手に感じる汗のない肌に、乃凪のほうがどうにかなりそうだった。
 そんな状態でも気を遣う亜貴が、乃凪を頼ろうとしない亜貴が悲しかった。
「そんなことはいいから」
 声が苛立ちを含んでいたのかもしれない。乃凪に頭を預けている亜貴の身体が震えた。
「ああ、ごめん。依藤さんに怒ってるわけじゃないよ」
 頭を上げ、不安げにこちらを見上げる亜貴に、乃凪は自嘲の笑みを浮かべる。
 何よりも自分自身に腹が立つ。隣に彼女がいることが嬉しすぎて気づけなかった。それが悔しい。
「……先輩の、役に立ちたいなって、思ったんです…」
 ぽつり、と亜貴が言う。
 その声に、顰められていた乃凪の顔が驚きに変わる。
 見れば亜貴は真っ直ぐに乃凪を見ている。
「葛ちゃんがいないって聞いて、先輩の役に立てるかなって思ったんです。だから……」
 だからの続きはなかった。かわりにすみません、と亜貴の頭が下がり、謝罪が小さな声で聞こえた。
「依藤さん」
「はい?」
「俺はね、本当に自分本位な人間なんだよ」
 汗で首筋に貼りついた亜貴の髪を、乃凪は背後へ追いやる。
 笑いが歪む。
 つけこんだところで、残るのは後味の悪い思いだけだとわかっているのに、言葉が止まらない。自分も熱気にやられているのかもしれない、と乃凪は思う。
「そんなふうに言うと、俺の都合のいいように解釈するよ?」
 亜貴の心がこちらを向いていないのがわかっているのに。
 憧れだと言った、亜貴の声を忘れていないのに。
 内沼がいないのがわかっていて、手伝いを申し出てくれたことに、愚かしいほどの期待をしてしまうから。
「……………いいですよ」
 亜貴の声は小さい。
 聞き間違いかと思った乃凪の耳に、もう一度亜貴の声が届いた。
「先輩だったら、いいです」
 見上げてくる亜貴の目は穏やかに笑んでいた。
 それを真正面から受け止めて、乃凪は目を見開く。

 それは、期待していていいということだろうか。
 居場所をそこに求めてもいいのだろうか。
 ここにいることの意味を、君に求めてもいいのだろうか。
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2007.07.27‖TAKUYO
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