古いデータの中に突っ込まれてたのを発掘。
宵闇に、桜が咲き誇る。
柔らかに発光しているように、ぼんやりと薄紅の花びらが、舞う。
「綺麗だね」
彼が笑った。
「そうですね」
それを見て、私も笑った。
幸せだった。
ひどく幸せで。
「本当に綺麗…」
空を仰げば、桃源郷のような。
ただ視界を埋め尽くす、春の香り。
「望美ちゃん…」
狼狽えたような、彼の声。
幸せで、幸せで、幸せで。
ああ、どうにかなってしまいそう。
「はい?」
「泣かないで?」
「私、泣いてなんか…」
「泣いてるよ」
滲んだ視界に、彼の顔がはっきりとしない。
それでも、今は。
「景時さんが、そこにいてくれるから」
笑う。
掴もうとすればそこにいる。
彼のぬくもりが嬉しくて。
だから。
笑う。
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2010.02.02‖その他