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2017.11.18‖
土浦の卒業式妄想。



「卒業おめでとうございます、土浦先輩」
 満開の桜の下で、冬海がにこりと微笑んだ。
 目尻にほんの少し涙をためて、けれどやわらかく微笑む冬海はとてもかわいくて、土浦は思わず息を飲む。
 声をなくした土浦を、心配そうに窺ってくるのも凶悪的にかわいかった。
「ああ……」
 土浦はにやけそうになる口元を手で覆い隠し、相槌をひとつ打つ。そして堪えきれなくて視線を逸らす。
 二人きりになりたくて、音楽棟の裏まで連れてきてしまったけれど、こんなことなら、まだ人の大勢いる正門前にいたほうがよかったかもしれない。理性と本能を頭の中ではかりにかけながら、土浦は若干の後悔を覚えた。
 つきあいはじめて、およそ一年。ようやく冬海は土浦に対して打ち解けてきたように思える。
 自然と笑顔を見せるし、土浦と一緒にあることを普通だと考えるようになってきたのだ。だが、今日をもって土浦は星奏学院を卒業する。今までの生活パターンは崩れて、もしかしたら冬海と疎遠になるかもしれない危機感が土浦の中にはあった。
 土浦が認識していなかっただけで、冬海は守ってあげたくなるような可憐な外見をしているし、中身も誠実で純粋で世間知らずで男の庇護欲をそそる。同性ですらかわいい、と溜め息を漏らすほどの美少女は、土浦とつきあうようになってなお、人気があるのだ。
 これで自分が卒業して、そばで牽制できなくなったら、と考えるだけでも恐ろしい。けれど、新学期からはそうした日々が当たり前に続くことが土浦の心配の種だった。
「…………」
「…………」
「………先輩?」
 沈黙がふたりの間に降りて、小首を傾げた冬海が土浦を呼ぶ。
 考えに沈んだ思考を戻し、視線を上げれば不安そうな瞳とぶつかった。潤んだ大きな瞳は、男を誤解させるには十分で、土浦は焦りに駆られて声を荒げた。
「ああ、もう…!」
「せ、先輩……?」
 頭をがりがりと掻きむしる土浦に、驚いたような冬海は目を瞬かせた。
 そんなわずかな仕草もかわいらしくて、土浦は眉間にしわを寄せ、大きな溜め息を吐く。
「胃に穴が開く」
 唸るような声に、冬海は大きく二、三度、瞬きをする。
「……だ、大丈夫ですか?」
 土浦の言葉をそのまま受け取って、どうしよう、と狼狽えるさまもかわいいけれど、そのかわいさが致命的だ。土浦はおろおろとする冬海の手をつかんで、腕の中に抱き込んだ。細い身体はやわらかくて、捕らえどころがない。慌てふためく冬海の肩に顔を埋めて、大きく息を吐き出した。
「お前のせいだ」
「あ、あの、……え?」 
 予想外のことを言われたせいだろう。抵抗のやんだ身体を少し離して、土浦は冬海の顔をのぞきこむ。驚き一色だった顔色が、一気に赤く染まるのを見て、土浦はほんの少し溜飲を下げる。
「お前が、かわいすぎるのが悪い」
 告げると、ただでさえ赤かった顔が、さらに赤みを増す。
 そんな初心で純粋な反応に惑わされるのは自分だけではないだろうけれど、その目に映るのは自分だけだと信じるほかに道はない。
 土浦はこれからの心労を考えながら、頬に負けぬほど赤い唇に口づけた。
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