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2024.04.27‖
 B6/28P/¥300/2010.05.02発行



 どうしても解けない問題がひとつあって、かなではペンを放り投げた。
 全国学生音楽コンクールのファイナルが目前だとはいえ、学生の本分は勉強である。数日前には、菩提樹寮に寄宿しているメンバーで勉強会をした。あのときは寮生ではない大地やハルも呼んで、とてもにぎやかな勉強会になった。
 だが当然、それまでほとんど手つかずだった大量の課題をすべて終えきることはできなくて、空き時間を見つけては、こうして少しずつ進めているのだ。
 基本的に、日中はヴァイオリンの練習に充てているので、勉強は夜することになる。今日も例に漏れず夕食のあとに課題をはじめたのだが、今日はずいぶん集中できていた。ノートを見返してみれば、予定していた分の課題は終わっている。解けない問題があって唸っていたのだが、ここまでできているなら、残りは明日にしてもいいかもしれないと考える。かなではノートから目を離して、勉強をはじめるときに用意していた飲み物のグラスを傾けた。
 しかしグラスの中は空で、飲めないとわかると妙にのどの渇きを覚える。キッチンへ飲み物をもらいに、かなでは椅子から立ち上がった。ついでに、誰か教えてくれそうな人がいたら教えてもらうつもりで、課題を手にして部屋を出た。
 最初からラウンジで勉強をしてもいいのだが、にぎやかな空間では、どうしても集中できないこともある。それに至誠館や神南の面々は、この夏休みが終わってしまえば、地元に帰ってしまうのだ。新学期に静まり返るだろうラウンジを思い浮かべて、かなでは小さく息を吐いた。
 あのにぎやかさに慣れてしまったから、とても寂しくなる。
 星奏学院へ通うには実家は遠すぎたから、こうして菩提樹寮に寄宿することになった。多少の無理を通してでも星奏学院へ通うことにしたのは、かなでの意思だ。だから家族と離れて寂しいなんて、口にするつもりはなかった。それにホームシックにかかる前に、本当にたくさんのことが起こって、寂しいなんて気持ちはどこかへ行ってしまっていた。オーケストラ部内の演奏者の選考も、地区大会も、セミファイナルも、あっという間のできごとで、その都度一生懸命に走ってきたから後ろを振り返る余裕などなかったのだ。
 だけど。
 かなでは唇をかんで俯いた。
 楽しさを与えてくれたみんながいなくなれば、きっと寂しい。もう、今のように気軽に会えなくなるのだ。ふと脳裏に浮かんだ面影に、胸がずきりと痛む。それをごまかすように、かなでは胸に抱えたノートを強く握りしめた。
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2010.05.02‖offline
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