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2018.12.19‖
マンゴープリン妄想



 何かあったのだろうか、と思ったのは八木沢が動いたのに気づいたからだ。
 東金はかなでに歩み寄っていく八木沢の背中を、何とはなしに眺めた。その手には、かなでに配られたマンゴープリンのカップがある。それを一口食べると、芳醇なマンゴーのかおりが鼻を抜けていった。ほどよくやわらかいゼリー部分はすんなりと喉を通って、完熟の柔らかな果肉がアクセントになっている。さっぱりとした後味ながら、濃厚なマンゴーの風味が感じられて、東金は思わず目を見開いた。
(あの天音のチビ、やるじゃないか)
 こんなに美味なマンゴープリンを差し入れられたとあっては、かなでの心も弾むだろう。続けざまに口に運ぼうとしたところで、八木沢がマンゴープリンの入ったカップをかなでに返そうとしているのを視界に捉えた。八木沢は和菓子屋の跡取りで、甘いものはどちらかといえば好物のはずである。嫌いで返したのでなければ理由は何だろうかと、東金は疑問に思って近寄った。近づけば会話が切れ切れに聞こえてくる。
「とてもおいしそうなので味は気になるんですが、全部は食べられなさそうなので、足りない方に渡してください。残すのも七海くんに申し訳ないですしね」
 八木沢の言葉に、東金は合点がいった。要するにマンゴープリンが人数に対して足りていないのだろう。それに気づいた八木沢が辞退しているのだ。
 そう気づいて東金はむっとした。
 不手際は星奏側の問題で、八木沢は関係がない。だが、困っているのを見過ごせないのが八木沢の八木沢たる所以である。そんなことは十分承知で、東金は腹が立った。自分が我慢していることに気づけないのが八木沢なのだ。我慢しているつもりもないのだろうが、好きなものくらい取っておけばいいのに、と東金は眉を寄せる。
 だから、どちらかといえば苛立ちは八木沢に向けたものだった。つかつかと歩み寄って、東金は尊大に言い放つ。
「ユキ、口開けろ」
「……は?」
 東金の声に驚いて振り返った八木沢の口が、都合よく開いている。東金は有無を言わさずにマンゴープリンを掬ったスプーンをその中に突っ込んだ。
「千っ、………ッ!」
 抗議の声と一緒にマンゴープリンを無理矢理押しこんで、東金は八木沢の口の中からスプーンを引き抜いた。仕方なしにもぐもぐと咀嚼をはじめる八木沢に、呆れを隠さずに告げる。
「甘いもの好きなくせに」
 かなでに聞こえないように小声にしたのは、八木沢の好意を踏みにじりたくなかったからだ。八木沢のおかげでせっかく問題が丸くおそまりそうなのに、それを蒸し返す気はない。
 東金の言葉に、八木沢が驚きを向けてきたのには無言を通した。幼なじみなのだ。そのくらい知っている。知らない、と思われていたほうが心外だ。
 八木沢の喉が上下するのを確認してから、東金は器用に片眉を上げて不遜に笑う。
「うまいだろう」
 自分が作ったわけでも買ってきたわけでもないのに、自らの手柄のような東金の様子に、八木沢は困ったように顔を曇らせた。
「おいしかったけれど、今みたいに乱暴にされると困るよ、千秋」
 八木沢のもっともな言い分に東金は反論しようとしたが、でも、と続けるその顔がほころんだのに声を飲んだ。
「千秋の心遣いは嬉しいよ。ありがとう。それに、本当にとてもおいしかったし…。千秋は優しいね」
 艶やか、とも形容できるほどの笑顔に、東金は鼓動が早くなっていくのを感じて戸惑った。
「う…うまかったから食わせたかっただけだ」
「うん、知っているよ」
 何故か頬が染まる。そんなものを見られまいと、そっぽを向いたのに、にこにこと笑顔を向け続けてくる八木沢に焦燥を感じる。
 何だ、これは。
 妙に高鳴る心音に、東金は困惑した。何故自分は、同性の、しかも幼なじみで一筋縄ではいかないとわかっている八木沢を、かわいいなどと思っているのか。
 どうしたらいいのかわからなくて、東金は持っていたマンゴープリンをがつりと一口食べた。その残りを無理矢理八木沢に押しつける。
「残りはお前が食え! 俺が分けてやったんだ。いいか、残すなよ」
 噛み付くような勢いに、八木沢は目を瞬かせた。
 その仕草もかわいいと思ってしまうのは、何かの末期か。
 ふわりと微笑んで「ありがとう」と告げた八木沢を抱きしめたくなるのはどうしてだろうかと、東金は頭を抱えた。



東金さんは、何となく八木沢が好き。
八木沢は純粋な友情だと信じている。
そんな噛み合なさがかわいいと思います。
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