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2017.10.23‖
マンゴープリン妄想



「土浦先輩、甘いものってお嫌いですか?」
 冬海に問われて、土浦は目を瞬いた。好きか嫌いか、と問われればどちらかと言えば苦手ではある。食べられないほど嫌いというわけではないが、これは素直に答えるべきだろうかと思案して冬海を見下ろした。
 夏休みの学校には人影はまばらで、普段ならば人の多い森の広場も例外ではなかった。ただ、ふたりきりを邪魔されたくはなかったので、広場から繁みに少し入った、冬海がよく隠れて練習をしている場所でふたりは昼食を食べていた。
 件の発言は、ふたりが自分の分の昼食を食べ終えてからだった。心配げに見上げてくるのに、土浦はふと表情を和ませる。
「何かあるのか?」
「え、えと、デザートを持ってきたんです」
 おずおずと言いながら冬海が取り出した白い箱を開くと、その中にはプリンのカップのようなものが入っていた。だが、その中身は白と黄色だ。何だ、と首を傾げる土浦に、冬海ははにかんで頬を染めた。
「マンゴープリンと、杏仁豆腐なんです。あの、天羽先輩から教えていただいたお店で、スイーツのお店じゃなくて、小さな中華屋さんなんですけど、すごくおいしかったので、先輩にも食べていただきたいなぁって思ったんです」
 かわいらしいことを、かわいらしい声で言う。冬海の様子に、土浦は苦笑いを浮かべた。付き合うようになって、こうして慕ってくれるのは嬉しいけれど、冬海が持っているのは『恋』という好意なのだろうか。ただの先輩だと思われてはいないだろうか。
 無防備な冬海にそんな心配を覚えながら、土浦は尋ねた。
「甘過ぎないのとか、フルーツのかはわりと平気だな。お前、どっち食べたんだ?」
「マンゴープリンです」
「じゃあ、そっちをくれよ。お前のおすすめなんだろう?」
 笑って黄色のカップを指をさせば、冬海は嬉しそうに頷いた。箱の中から慎重に取り出されたカップと、プラスチックのスプーンを手渡される。甘いものはそんなに好んで食べたりはしないが、冬海のおすすめだというマンゴープリンは、やけにうまそうに見えた。スプーンを突き刺して口に運べば、南国フルーツの甘みが広がった。ふわ、と鼻を抜けていく香りは強くて、本物のマンゴーを使って作っているんだろうと土浦は唸った。
「うまいな、これ」
「そうですよね。よかった……」
 ほっとしたように胸を撫で下ろす冬海に胸が騒ぐ。土浦は冬海にじっと見られていることに堪えきれず、彼女の持っている白いカップに目をやった。
「お前は食わないのか?」
 告げれば、あ、と気づいて、いただきますと手を合わせ、ぷるぷると震える白いゼリーを口に運んだ。自分で作ったものでもないのに、何故か反応が気になって見入ってしまう。赤い唇が閉じられて、口がもぐもぐと動く。頬が緩んで、大きな瞳が輝いた。細い喉を動せて嚥下した冬海は、土浦を見上げて嬉しそうに微笑んだ。
「杏仁豆腐も、すごくおいしいです」
 感動した様子で、冬海は目をきらきら輝かせた。
 冬海がそんなにうまいという杏仁豆腐はどんなものだろうか、と土浦は興味をそそられる。そして姉や弟に対するときのように、何気なく言ってしまった。家では、そういうことは日常茶飯事なのだ。だから、そんなに大層なことだとは考えてもいなかった。
「じゃあ、それ俺にも一口くれないか」
「え?」
 そう、頬を真っ赤に染めた冬海がこちらを見るまでは。
 土浦は動揺して、思考が止まった。
 お互い驚きに動かないでいたのは、実際にはとても短い時間だったと思う。
 先に動きを再開させたのは冬海で、彼女は震える手で、スプーンの上に杏仁豆腐を乗せて差し出してきたのだ。それで土浦も失言だとわかった。失言というか、不用意だったというべきか。少なくとも、その言葉が連れてきた冬海の動作は、土浦の想像とは違うものだった。カップごと渡してくれれるものだとばかり思っていたのだ。そうしてくれれば自分で食べたし、実際に家ではそれが普通ですらあった。
 だから『食べさせてくれる』という選択肢は自分の中になかったのだ。けれど冬海の中では自分の位置づけが、しっかりと『恋人』であるのだろうという変な安堵を覚える。多分、他の男子生徒が同じ発言をしても、冬海はこういう行動には出ないだろう。それは土浦だからなのだ。
 些細、ではないだろう。限りなくたくさんの勇気を振り絞って、冬海はそうしてくれている。優越感を覚えて、土浦は震える冬海の手を上から握りしめた。びくり、と震えた冬海をかわいく思いながら、土浦は冬海の絶賛した杏仁豆腐を口に含む。トロトロと、とろけるような滑らかさで喉を落ちていくそれに、自分の顔が笑み崩れていくのを知った。


ちょっと、いつもよりも頑張っている冬海ちゃんです。
土浦が無理矢理っていう展開が結構多かったので、冬海ちゃんがしてくれて土浦が喜ぶ話を、と思ったらこうなってしまいました。
相変わらずへたれなのは変わらないですが、土浦も幸せを噛み締めたらいいと思います。
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