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2018.11.22‖
配信イベント妄想



「……うん、そういうわけだから、明日の朝にそっちへ戻るよ」
 電話の向こうの火積にそう告げて、じゃあおやすみ、と八木沢は携帯を切った。
 八木沢は東金の実家にいた。他の面々と神戸の夜景を楽しんだあと、東金の両親と久々の対面を果たし、部屋の取ってあるホテルへ帰ろうとしたものの、久しぶりなんだから泊まっていったら、という東金の母の言葉を無碍にすることもできず、今に至る。
 今日は楽しい一日だった。
 八木沢は全国学生音楽コンクールで知り合った星奏学院のコンクールメンバーと、至誠館の吹奏楽部メンバーとで、神戸へ一泊旅行をしにきているのだ。ことの発端は東金の電話で、行き帰りの新幹線も、宿泊のホテルも面倒を見るという甘言に乗ったかたちである。
 ただ、その電話はこの小旅行の一週間前に鳴ったのだ。皆のスケジュールが空いていなかったらどうするつもりだったのだろうかと八木沢は考える。いや、東金のことだから、そうであったのなら日程を簡単に変更したに違いない。今年の夏を一緒に過ごしたメンバーでまた集まり、楽しく過ごしたいと、多分動機はそんな単純なところだろうから。
 仙台に帰ってから、八木沢も星奏学院の菩提樹寮で過ごした日々を思い出していた。大人数でわいわいと過ごすのはとても楽しくて、あっという間に一ヵ月が過ぎていた。もう一度、こうして大所帯が集まることは難しいと思っていたが、東金の手にかかれば何でもないことのようだ。
 こんなに簡単なことならば、今度は皆を仙台に呼ぶのもいいかな、と八木沢は考える。
 室内を振り返って、八木沢はソファにふんぞりかえって紅茶を飲んでいる東金に笑いかけた。
「千秋、今回はありがとう」
「何がだ?」
「楽しかったよ」
 八木沢が言えば、東金はいつもと同じ余裕たっぷりの笑みで応えた。
「俺プロデュースなんだから、当然だろう」
 ふふん、と鼻を鳴らしかねない自信に、八木沢はにこりと笑ってトゲを刺す。
「まあ、千秋プロデュースになかった企画で、僕はここにいるんだけど」
 八木沢の遠慮のない物言いに、東金の眉が上がる。やれやれと肩を竦め、東金は息を吐いた。
「仕方ないだろう。両親が久しぶりにお前に会いたいというんだから」
 俺ばかりは不公平だから連れてこいと電話攻撃があったんだ、とうんざりした表情を隠さない東金に、東金家のパワーバランスを思い出して八木沢はうっかり吹き出した。おっとりしているように見えても、東金の母は東金の母である。東金が反抗しきれたことなど、一度もないと八木沢は知っている。だからこそ東金に睨みつけられても、こみ上げた笑いの発作は収まらなかった。ごめん、と謝る声にも笑いが含まれていて、東金は手元にあった布のかたまりを八木沢に向かって投げつけた。突然だったが、胸のあたりに飛び込んできた布のかたまりを、八木沢は難なく捕まえる。
「お前はさっさと風呂に入ってこい! タオルと着替えは出してあるはずだ」
 不機嫌な東金にも笑いがこみあげてきて、八木沢は布のかたまりを元の場所へ戻して笑いながら部屋を出た。その後ろから、いつまでも笑うな、と声が追いかけてきたが、それはできない相談というものだった。



「ああ、千秋。お帰り」
 風呂に入りさっぱりとした顔で、東金は自室へ戻ってきた。八木沢は当然のようにそこにいて、東金を出迎える。その辺にあった本を読んでいたらしい八木沢は、東金に顔を向けて眉を寄せた。
「髪はきちんと拭く! しずくが垂れてるじゃないか」
 八木沢はつかつかと歩みよって、タオルでがしがしと頭を拭いた。痛いと抗議する東金の声など、一切無視である。短い東金の髪を拭き終えて、八木沢はそれで、と尋ねた。
「僕はどこで寝ればいい?」
「ここでいいじゃないか」
 八木沢の質問に、東金は当然のように答えた。
 実際、東金のベッドは広い部屋に似つかわしく大きく、男子高校生のふたりが身体を横たえても不自由はなさそうだった。そういえば昔はよく一緒に寝ていたなと懐かしく思い出して、八木沢は頷いた。
「そうだね。わざわざ客間を用意してもらうのも申し訳ないし…」
 言いながら、八木沢はさっさとベッドに向かう。東金が普段ひとりで使っているベッドには、当然ながら掛け布団も1枚しかない。これもふたりで使うのに何ら支障はなさそうだったが、男子高校生がふたりで同じ掛け布団を使うというのもいかがなものかと、八木沢は東金を振り返る。
「掛け布団だけ用意してもらえるかな」
「ああ、それならそこにある。空調は入ってるし、それで十分だろう」
 と、東金が指差したのは、風呂に入る前に八木沢に投げつけてきた布のかたまりだった。最初から一緒に寝るつもりだったのか、と東金の手回しのよさに内心苦笑する。
 東金は小さいころから、利発な子どもだった。偉そうだったし生意気でもあったけれど、頭の回転は誰よりも早い。そして自立する意識も強いくせに、八木沢には甘えてくる。心を許して甘えてくるのがわかっているから、八木沢も東金に対しては余計な気を遣わずにすんでいる。そうでなければ、こんなふうにわがままだとわかっていて振り回されるふりをしたり、同じベッドで寝たりしない。
「じゃあ、僕はもう寝るよ。明日もあるし」
 八木沢はソファの上にあるタオルケットを取り上げて、ベッドに横になる。横になれば疲労が心地よく身体を包んだ。
 今日は早い時間から新幹線で五時間も移動して、東金と合流し、連れて行かれた六甲山牧場で陶芸に勤しみ、さらに夜景を観に行ってからここへ来た。考えてみれば結構な活動量だ。アウトドアが好きだと言っても、疲れないわけではない。それに、ここに着いたのがすでに遅い時間だった。東金の両親に挨拶をした時間が時間だったから泊まっていけば、という提案も出たのだろう。
「ああ、おやすみ」
 東金の声に、八木沢はうとうとしながら返事を返す。もう声を出すのもめんどうだ。柔らかなベッドの感触に埋もれて、八木沢は眠りに落ちた。


「………警戒心ゼロ、か」
 寝入った八木沢の隣に横たわりながら、東金は呟いた。
 一応気を遣ってはいるものの、隣で人がひとり動いているというのに、目を閉じた八木沢は微動だにしない。そういえば、八木沢は寝入りも寝起きもいいのだが、眠っている最中はほとんど目を覚まさない。小さいころ、東金の実家にやってきた八木沢の母が、雪広は地震でも目が覚めないのだと笑っていたのを思い出す。
 過去を思い出して、東金は遠い目をした。
 幼いころ、初めて会ったとき、かわいい女の子だと思った。同性だとわかってからも、八木沢のことがかわいい。今でもかわいい。しっかりしているようで抜けているところも、流されそうに見えて頑固なところも、こんな顔で意外とアクティブなところも、トランペットに真剣なところも。
 トランペットを吹く姿を思い出しながら、勝ちたかっただろうと、東金は夏の大会に思いを馳せる。至誠館の誰よりも、八木沢は勝ちたかっただろう。これから東金たち三年は受験に向かって一直線だ。音楽ばかりにうつつを抜かしてはいられない。
 最後の大会で、優勝できなかったのは東金も同じだが、より長くあの舞台にいたのは神南のほうだ。地区大会で負けたのは悔しかっただろうなと、東金はさらさらとした八木沢の髪を梳いた。
 その気分転換にと八木沢だけを誘っても乗ってこないことがわかっていたから、星奏のメンバーも巻き込んで神戸へ呼び寄せた。今日一日、楽しそうに笑っていた八木沢を思い出して、東金は顔をほころばせる。
「俺がこんなに気を回すのは、お前だけなんだがな。ユキ」
 小さなころの愛称をそのまま呼ばせてくれる八木沢に抱くのは、おそらく恋情だ。無防備に寝顔をさらす八木沢に、少しばかり悪戯心が沸く。
「礼をもらっても、罰はあたらないよな」
 口角を引き上げて、東金は静かに眠る八木沢の額に口づけた。


一番最後の千秋さまの独り言を書きたいがためのテキスト。
前半部分必要かどうか悩んだけど、せっかく書いたから乗っけときます。つか、状況説明のはずだったのに、千秋さま視点で書いてたら「ユキかわいい」しかない気持ち悪い文章になったので却下しました。
それにしても千雪って表記かわいいな! 百合同士のCPなので、お花散る感じの話が書きたいです。
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