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2017.12.16‖
マンゴープリン妄想



「八木沢さん」
 麦茶を飲みにきたラウンジで呼び止められて、八木沢は声の主を振り返った。
 そこにはニコニコしたかなでが、両手を背後に回して立っている。
「小日向さん、何かご用ですか?」
 かなでに呼び止められて、八木沢の顔には自然と笑みが浮かんでいた。
 東日本大会が終わってから、至誠館の面々は星奏学院の菩提樹寮にお世話になっている。悔しいという気持ちがないわけではないが、音楽にまじめに向き合って自分の音を探しているかなでには好感を持っていた。そんなかなでに呼び止められれば、笑顔が浮かんでしまうのも仕方ない。
 そんな八木沢に差し出されたのは、白い箱だった。
「これは……何ですか?」
 目を瞬かせて尋ねると、かなでは何を思い出したのか、口を尖らせた。
 かなでが怒るとは珍しいが、そんな表情もかわいらしい。そんなことを考えてしまった自分に、はっと気づいて八木沢は動揺する。しかし動揺を押し隠してかなでの答えを待った。
「マンゴープリンです。この間、八木沢さん食べられなかったでしょう?」
 そう言われて、思考をたどった八木沢は合点がいったように頷いた。
 ことの発端は、かなでたちが至誠館と神南との親睦会を開いてくれたことにあった。
 バーベキューで肉を差し入れてくれた至誠館、それに寮の修繕をしてくれた神南への謝礼という意味もあったその親睦会で、かなでたちは手料理を振る舞ったのだった。その相談を、ハルが七海にしていたのである。実家が中華料理店の七海は、点心くらいなら差し入れられると提案してくれて、実際にマンゴープリンを届けてくれたのだ。
 そこまでは、特に問題もなかった。むしろ歓迎すべきことですらあった。問題が発覚したのは、そのあとのことだ。
 七海が届けてくれたマンゴープリンは食後に食べることにして、食事中は冷蔵庫で冷やしてあった。だが、取り出してみるとその中から、なぜかひとつが消えていたのだ。七海が届けてくれた時点では人数分あったことは確認ずみだったし、逆に言えば数は人数ぴったりしかなかった。すわ、マンゴープリン争奪戦か、というところで、八木沢が「ほかのみなさんでどうぞ」と身を引いたのだった。
 だから八木沢は首を振った。証拠などなにもないが、正直なところ、犯人は新なのかもしれないとちらりと考えていた。だからこそ、部長である自分が引いておこうと思ったし、あの楽しい場を糾弾することで壊したくもなかった。かなでたちの手料理は本当においしくて、それだけでも十分すぎるくらいなのだ。マンゴープリンが食べられなかったからといって、八木沢に不満があるはずもない。
「ああ、でもそれは僕が辞退したことでもありますし…」
「駄目です! だって本当は全員分あったんですよ? 誰か2個食べちゃった人がいるんです。それで八木沢さんが食べられないなんて、ひどいじゃないですか」
 八木沢の思惑など知らず、頬を膨らませるかなでの様子が好ましくて、八木沢はくすくすと笑い声を漏らした。八木沢が食べたのだとは、まったく考えもしていないことに信頼を感じて、それも嬉しい。
「もー、笑い事じゃありませんってば!」
 ますます頬を膨らめるかなでは、次の瞬間には心配そうな表情で八木沢を見る。
「もしかして、マンゴープリン苦手でした? それなら、余計なことですよね…」
 手に持ったままの白い箱を見つめて、しょんぼりと項垂れるかなでに、八木沢は慌てて首を振った。
「そ、そんなことはありませんよ。和菓子もですが、ほかの甘いものも好きなんです。だから、小日向さんのご好意は、ありがたく頂戴しますね」
 そう告げて笑えば、かなでもぱあっと顔を明るくさせた。
「それに、ちょうどお茶にしようと思っていたんです。小日向さんも、ご一緒にどうですか?」
「いいんですか?」
「はい」
 八木沢が頷くと、かなでは本当に嬉しそうに微笑んだ。それにどきりと胸が高鳴って、頬が熱くなったように感じる。八木沢はそれをごまかすように、かなでが持っている白い箱を取り上げて蓋を開いた。中にはマンゴープリンの容器がふたつ入っていて、八木沢は首を傾げる。
 ふたつ、ということは自分以外にも誰かに渡すつもりだったのだろうか、それとも……。
 そう考えながら、八木沢は尋ねた。
「僕と、誰の分だったんですか?」
「あ、え、えと……、その、自分の分も買ってきちゃったんです。この間の、すごくおいしくて」
 慌てて両手を胸の前で振りながら、取り繕うようにかなでは告げた。
「それに、八木沢さんと一緒に食べられたら嬉しいなって、そう思ったから……」
 次いで発した言葉とともに、かなでは頬を染めて笑った。
 そのかわいらしい笑みに、八木沢は胸が大きく脈打つのを感じたのだった。



八かなは、はじまってない恋がかわいいと思います。
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2010.05.21‖コルダ3
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