月森×日野
「今回のコンクールは音楽を楽しむものじゃないの?」
そう言った君に、殺意のような嫌悪を覚えた。
* * * * *
ヴァイオリンを奏でるのは、半ば義務だった。
音楽を、楽しむ?
そんな余裕がどこにある。
天才だ、サラブレッドだと持ち上げられたその陰で、何もしていないとでも思っているのか。練習に練習を重ね、だからこその結果だ。
楽しむ余裕など、ない。
巧く正確に弾くことがすべてで、それ以上でもそれ以下でもない。
本当に苛立った。
君が楽しそうだったことが、とても気に障った。
けれど、いつの間にか無意識に君の姿を探していた。
君の音を聞くことが楽しみになった。
あんな風に弾くことができればいいとも思った。
だから、裏切られたのだと感じたのだ。
君が手にしているのは魔法のヴァイオリンだ、と聞いたときに。
練習の苦しさも、過度な期待の辛さも、何もかもが君の中では偽物だと突きつけられたような気がしたから。
酷い言葉を吐いたように思う。
心を埋め尽くした苛立ちを、自制することができなかった。
今思えば、それだけ君に傾倒していたのだけど。
それでも君にその資格があると認めれば、それだけでもうすべてがどうでもいいような気がしている。
棚ぼたでもなんでも、君が音楽を、ヴァイオリンを始めたことは間違いじゃない。
少なくともそう俺は思う。
君の音楽が好きだ。
君のヴァイオリンが好きだ。
君が、好きだ。
この手で紡ぐ音楽が、せめて君に届けばいい。
棚ぼたイベント前後イメージ。
月森のツンデレっぷりは、本当に好きだ。
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2006.11.28‖コルダ:その他