拍手ログ。
金澤×日野。
金澤×日野。
差し出されたのは暖かい缶紅茶で。
その手の先に、先生がいた。
「いいんですか?」
「俺はこっち」
と、もう片方の手でコーヒーの缶を持っている。
小さいサイズの黒いそれはきっとブラックだ。
ヴァイオリンをケースにしまって、それを受け取ると自分の手がどれだけ冷えていたのかわかる。
「ありがとうございます」
缶に頬ずりして暖かさを味わっていると、先生は器用に片方の眉だけを上げた。
「もう夕方だからなぁ。そんなに寒かったんなら、早く帰ればよかったんじゃないか?」
「弾いてるとわかんないんですよ。自分で感じてたより、寒かったみたいです」
笑って先生を見上げると、フワっと煙草のかおりが漂った。
「……え?」
「貸してやるよ」
巻いていたマフラーを私の首にかけて、先生は寒いのか首をすくめた。
「いいですよ! 先生が寒いでしょ?」
外そうとする手を、先生の手に取られた。
大きなごつごつした手は、私のものと全然違う。
男の人の、大きな手。
長くて骨張った指が、私の指を大事そうに包み込む。
先生を見れば、優しく微笑んでいる。
その顔と。
掴まれた手と。
いつもと違う『先生』じゃない『先生』を見た気がして、血が一気に逆流した。
顔が熱くなる。
「せせせ、先生ッ! 誰かが……ッ」
「来るかもなぁ」
喉の奥で笑いを含んだ優しい声も、私を惑わせる。
「でも、もう離せない」
「先生…?」
風が吹く。
冷たいはずなのに、冷たくなくて。
どうしてかと思えば、先生の腕の中にいて。
「もう手放せないんだよ」
そう、耳元で囁かれた。
PR
2007.03.14‖コルダ:金澤×日野