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2017.11.18‖

003

 ストッパーは、どこ?



「…………ッ、依藤、さん?」
 乃凪の後ろで、ドアが音を立てて閉まった。
 途端、乃凪の身体をドアに押しつける。その胸に、亜貴は縋りついた。息を飲んだ乃凪の手が、うろうろと空をさまよう。けれど狼狽える乃凪の心境など、亜貴には考慮する余裕がなかった。
 靴も脱がず、狭い玄関で身体を求める。どれだけ切羽詰まっているのか、その行為で察してほしい。
「どうしたの?」
 乃凪の手が、ようやく居場所を見つけたように、亜貴の髪を撫でた。ひどく優しいその行動に、亜貴はより一層力をこめて乃凪の身体を抱きしめる。
 中途半端な優しさとか、真面目さとか、そんなものはもういらない。
 好きだと言ってくれるのなら、疑ってもいいから奪ってほしかった。
 なりふり構わず求めてくれるくらいに、強引でいい。
「何かあった?」
 焦りなど微塵も感じさせない宥めるような声にふつりと何かが途切れた。迫りあがってくるのが怒りなのか悲しみなのか、それとも両方なのか。グ、と喉の奥に空気の塊がある。これを吐き出してしまえば、楽になるのか。その前に涙があふれて止まらない。憎らしくて愛しい人。乃凪の体温をすぐそばに感じているというのに、心は遠い。幸せなど感じられない。
「……ぱい、が」
 嗚咽に言葉が繋がらない。
 乃凪だけが悪いなんて、そんなことは言わないけれど、いい加減察してくれてもいいではないか。
 こんなに、こんなに、こんなに。苦しくなるくらいに、乃凪が好きだ。
「……なぎ先…輩が、」
「俺が?」
 穏やかな柔らかい声。髪を撫でる手は優しいままで、自分が駄々っ子になってしまったような気さえする。しがみつく。
「信じて、くれないん……です」
「………何を?」
 乃凪の手が止まる。肩をつかまれて、顔を覗きこまれた。心配げな瞳が揺れる。
 それを見返して、亜貴は熱暴走を起こしている頭で考える。
 言葉を信じてくれないのなら。
 衝動だった。
 乃凪の顔が目の前にあった。
 いつもは遠いそれが、すぐ近くにあった。
 だから。
 …だから?
 違う。いつだって触れたかったのだ。
 そうしてそれが自分のものだと思いたかった。
 子ども染みた独占欲。
 それがわずかに触れて、離れた。
 乃凪の目が見開かれる。それを、ひどくおかしい気分で見た。
「私の、気持ちを」
 信じてください、と亜貴は願う。
「…………内沼は…?」
 乃凪の声がかすれている。
「葛ちゃんのことは、好きだけど、今は乃凪先輩が、一番、好きです」
 息が整わない。
 でも、信じてほしくて目の前の乃凪の顔を、真正面から見つめる。
 瞠目した乃凪が、ふいと横を向く。その耳がわずかに赤かったのを亜貴は見逃さなかった。
「好きです。乃凪先輩が、好き」
 畳みかけるように想いを伝える。あふれてあふれて、もう止まらない。一度は離れた乃凪の身体に手を回す。乃凪はびくりと震えたが、亜貴は離さなかった。
 祈るように目を閉じる。
 乃凪の鼓動が聞こえた。それが早い気がして嬉しかった。
「依藤、さん?」
 問いかけてくる乃凪の声が低い。感情を押し殺した声が、亜貴の耳を撫でる。
「……はい」
「それ、本気にするよ?」
「はい。してください」
 胸から顔を離して、乃凪の顔を見上げる。
 痛みをこらえているような、泣き笑いのような顔。乃凪が、ひどく真剣な目をして、亜貴を見据える。
「もう、離さないよ?」
「はい」
「内沼が君のことを好きだって言っても、渡せないよ?」
「はい」
「俺でいいの?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
「じゃあ、キスしてもいい?」
「………はい」
 乃凪の顔がほころんだ。
 幸せそうな、心から嬉しそうな笑顔に、どきりと胸が脈打つ。
 骨張った乃凪の手が頬を包む。顎から耳へ、こめかみへ、指が滑る。くすぐったくて身をよじると、動かないでと乃凪が囁く。
 待ち望んだ唇を受け入れながら、一筋だけ涙をこぼす。
 それは歓喜の涙だった。



 
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2007.06.27‖TAKUYO
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