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2024.11.22‖

004

※年齢確認※ 15歳未満禁止



「乃…凪先、輩……ッ」
 亜貴が顔を真っ赤に染めて、悲鳴を上げる。それを間近に見つめる乃凪の手が、たくし上げた制服の裾に滑り込んでいた。
「……イヤ?」
 ひどく熱っぽい、かすれた声が乃凪の口から漏れる。いつもの乃凪の声ではないようだった。
 キスをされて抱きしめられた。もう一度、とキスをねだったのは亜貴だ。やっと通じた想いを確かめたかったから。ただ、それだけがしたくて、背伸びをして乃凪の首に腕を伸ばした。
 乃凪は驚いたように身体を引いたけれど、離れたりするはずがない。
 上目遣いで懇願した。
 あなたの想いを。本当の想いをどうか、私にください、と。
 その、途端だった。
 強い力に引き寄せられた。息が止まるほど強く抱きしめられ、喘いだ口を塞がれる。食べられる、と恐怖さえ覚えるほどに激しく貪られた。引き結んだ唇を熱いものが這う。それが乃凪の舌だとわかると、それこそ大げさなほど身体が跳ねた。目を見開き、息を詰めると、一瞬だけ乃凪の唇がそこから離れる。息をするために開いた口に、計ったかのようなタイミングで乃凪が噛みついてくる。触れあう肌よりも熱の高い舌が、口の中を這い回る。それが中を探るたび、頭の芯が溶けていく。呼吸も声も思考も乃凪に奪われて、形も残らない。
 探るように乃凪の手が動く。制服の裾を割り、亜貴の肌へと触れる。
「いや、じゃ、ないです、けど…ッ」
 性急すぎる。
 何故こうなったのか、亜貴には理解できない。
 息が熱い。
「………あっ」
 びくり、と身体を竦める。背に乃凪の手が回され、動く。逃げ場もないままに撫で回されて、ぞくりとした感覚が背筋を襲う。
「ごめん、割と限界」
 額を合わせてくる乃凪は目を閉じ、眉根を寄せていた。その顔に、唐突に理解が及ぶ。
 不安だったのは、自分だけではない。
 内沼を好きでもかまわない、と乃凪は言った。けれど、望みも何もないままにその言葉を口にするには、どれだけの気力が必要だったのだろう。今でこそ、亜貴は乃凪を好きでいるけれど、もしそうでなかったら?
 乃凪がずっと亜貴の言葉を信じられなかったのは当然だ。
 内沼のことを好きだった自分を、乃凪は知っている。内沼に好きな人がいると聞いてショックを受けた亜貴を、乃凪は知っているのだ。
 ずっとずっと、乃凪は自分の気持ちを抑えていた。
 好きだと告げてくれてからも、ずっと。
「…先輩………」
 腕を乃凪の首へ回す。額をつけたまま、目を伏せた。
 臆病だったのではない。慎重だったのだ。口先だけで乃凪に逃げようとしないように。内沼のことをまだ好きでいるなら、そのままで。つらいからと言って、亜貴が自分の気持ちに嘘をつかないように。
 亜貴を大事に思っていてくれたから、亜貴の言葉を否定していたのだ。
 本当に、優しすぎる。
 亜貴の気持ちなんか置き去りで、ただ奪うこともできたのにそれをしなかった。
 そんな乃凪が好きだ。
 だから。
 恥ずかしくて呟くようにしか、告げられないけれど。
「私のこと、もらってくれますか?」
 乃凪の目が、上がる。大胆な発言に顔が熱い。でもこれは本当の気持ちだから。
「………あんまり挑発しないでくれる?」
 困ったように笑う乃凪に、唇を寄せる。
 これで信じてくれるだろうかと不安だったけれど、乃凪が驚いたように目を瞠ったから、それで十分だと亜貴は思う。
 湿気の多いべたべたとした空気が、露出した肌にまとわりつく。
 熱が交じる。蕩けて溶かされて、形が保てない。
 乃凪の汗が胸に落ちた。
 抱きしめてくれる腕と、熱。
 それだけがあればいい。
 痛みと苦しさと知らない感覚が身体の中を行き来する中で、亜貴は満ちる。
 最後の瞬間、絞り出すように「亜貴」と乃凪の声が呼び、そこで亜貴の記憶は閉ざされた。



 
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2007.07.02‖TAKUYO
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