ナイ亜貴
先輩は私が葛ちゃんを好きなことを知っている。
先輩は私が弱いことを知っている。
先輩は私のことを、知ってくれない。
乃凪先輩は、とても優しい。
葛ちゃんを好きな私を励ましてくれて、相談に乗ってくれて、いつだって私を優先してくれた。優しくなんかない、と先輩は笑ったけれど、でも先輩はやっぱり優しい。
そんな先輩が私のことを好きだと言ってくれた。
答えは求めていないと、逃げ道まで用意してくれた。
私が葛ちゃんを好きだということを知った上で、そう言ってくれた。
なんて、優しい人なんだろう。
なんて、残酷な人なんだろう。
いつだって、そうだ。
先輩は頭がいいし、顔だって綺麗だし、細くて華奢に見えるけれど実はとっても男の人で、風紀委員なんてところにいるせいで、キャラが崩壊しそうなこともあるけれど、とてもとてもいい人だ。先輩のファンがひそかに多いことも、私は知っている。
だから内心すごく焦っているのだけど、先輩の告白によって芽生えた感情が、順調に育っていることを、私は先輩に伝えきれずにいるのだ。先輩が優しすぎて、私の言葉は上滑りを繰り返す。先輩は私が葛ちゃんのことを忘れられないと、そう思っているのだ。先輩の「無理しないでいいよ」という言葉が、私に突き刺さる。
ねえ、先輩。
私の心を無視しないで。
お願いだから、私を見て。
私の心は確実に、あなたへと傾いているから。
お願い先輩、話を聞いて?
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2007.06.11‖TAKUYO