忍者ブログ
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024.04.25‖
2009.07.28のブログから転載。
衛藤×冬海。
注:衛藤ネタばれ。



 星奏学院にこの春入学した桐也は、物足りなさを覚えていた。星奏学院の設備やレベルは確かに桐也の求めるラインを超えていて、だからこそこの学校を身内びいきだけでなく選んだのだけど、それでもやはり物足りない。
 桐也のヴァイオリンは、国際コンクールで認められるほどのものだ。同学年には比肩し得るだけの相手はおらず、桐也が認めた月森蓮はウィーンへ留学してしまっている。日野香穂子の音も悪くはないけれど、それは技術が追いつけばの話だ。詰まらなそうに息を吐いて桐也は森の広場をふらふらと歩いていく。敷地だけは馬鹿みたいに広い星奏学院は、気分転換をするのに最適だった。
 ブラブラと歩き回る桐也の足が、ある茂みの前を通過しようとしたときのことだ。耳あたりのいい優しい音に、桐也は辺りを見回した。技術も音も、申し分ない。それはヴァイオリンではなくクラリネットの音だったけれど、興味をひかれて桐也は茂みに足を踏み入れた。
 膝下ほどの高さの茂みをしばらく行くと、奥まった場所にぽっかりと木立の途切れた場所がある。そこに立ち、一心にクラリネットを奏でている人の名を、桐也は知っていた。
 冬海笙子。日野と同じように、学内コンクールに参加したというクラリネット奏者だ。
 しかし、普段の彼女を見ていると、とてもそんな大舞台に立てるような度胸があるとは思えなかった。日野と一緒にいるところを見かける程度ではあるが、物静かで控えめで、自分をアピールすることを知らないのではないかとさえ思う。日野の友人という位置づけでしか彼女を知らないが、おそらくその推量は間違っていないだろう。
 だが、耳に聞こえる音はひどく優しく、包みこむような柔らかさを持って広がっていく。クラリネット特有の低めで暖かみのある音は、なるほど、彼女が奏でるのにふさわしい。
 桐也は口元に笑みをはきながら、曲が途切れるのを待って足を踏み出し、彼女に拍手を送った。
「悪くないじゃん」
 びくり、と身体を震わせた冬海の瞳が、桐也に焦点を合わせる。驚きを隠さない表情で、彼女は目を大きく瞬かせた。
「え、衛藤くん…」
 細い声に名を呼ばれたことに、何故か嬉しくなる。不思議な感覚に、桐也は叩いていた手を広げてみせる。
「あんたの音、結構悪くないのに、何でこんなところで吹いてるんだよ?」
「え、あ、あの……」
 じりじりと後退さる冬海に、桐也は一歩を詰める。それだけで、あっという間に二人の距離は縮まった。追いつめられる冬海の表情に、桐也はもう一歩を踏み出す。冬海の後ろに伸ばした足が、木の根に当たる。怯えをにじませた冬海の様子に、心がかき立てられる。冬海の後ろの木に桐也が手をつくと、何かに気づいたように冬海の顔が上がった。桐也もそれに気づいて、かすかに聞こえるヴァイオリンの音の方向に顔を向ける。誰の演奏なのか、確かめるまでもなかった。嬉しそうな声が間近に聞こえる。
「日野先輩の音……」
 視線を冬海に戻せば、実に嬉しそうな顔をしていて、桐也は眉を寄せた。
 こんな技術も何もない拙い音で、どうして聴衆に笑顔を浮かべさせることができるのか。冬海の笑顔に、桐也は苛々して悪態を吐く。
「相変わらず、下手な演奏だな」
 音の聞こえてきた方角を見ながら鼻で笑うと、予想外の反撃が来た。
「そ、そんなことありません!」
 叫んだ冬海に驚いて視線を落とせば、その顔は真っ赤に染まっている。
「日野先輩の演奏は、素晴らしいです。音楽が大好きって、ヴァイオリンが大好きって、こんなに音に溢れてる」
 普段とは違う意味に刻まれた眉間のしわ。怒る冬海の発する熱のこもった声、という希少価値の高いものに圧倒されて、言い返す言葉もない桐也の目を、冬海は真っ直ぐに見据える。
「日野先輩のことを悪く言わないでください!」
 その、目線の強さ。
 震えながらも、はっきりとした声。
 思いもよらない冬海の姿に、桐也の口元に笑みが浮かぶ。
「………悪くない」
「……え?」
 思わず口からこぼれた呟きに不思議そうな表情を浮かべる冬海に、桐也は笑顔を向けた。
「あんた、悪くないよ。音も顔も、それから実は気が強いとこも。うん、悪くない」
 その言葉にみるみる顔を上気させた冬海に、桐也はとうとう笑い声を立てた。
「そうやって恥ずかしがるのも、かわいいんだな」
 桐也の言葉に、ますます冬海の顔は赤く染まった。


何ていうか、一人で妄想してニヤニヤしてるのが悔しかったっていうか。
あのアフレコはイベントで生で見たし、そのときはかわいいなーくらいにしか思ってなかったんですが、アニメのDVDの特典映像見たら萌えたっていうか、わき上がるものがあったっていうか、それが抑えきれなかったっていうか。何か、そんな感じで。
うん、後悔はしていない。
土冬以上にあり得ないのはわかってるので、気分を害されたらホントすいません。
でもね、かわいいと思うんですよ。かわいくないですか。

今まで冬海ちゃんのまわりには、日野さんを肯定する人しかいなくて。
それは日野さんの頑張りを見てきたっていうのが大きいんだろうけど、衛藤はそんなの知らないからズバズバ本当のことを言っちゃう。だから冬海ちゃんは怒るわけだけど、そもそも冬海ちゃんが怒るって言うこと自体が珍しい。そういう強い感情を持つのが、日野に続いて二人目だとしたら…、みたいな妄想です。
土浦は相変わらず怖いです。怖いけど憧れてます。そんな感じで。土冬衛の三角関係でもおもしろいと思うけど、全部おいしいところは日野さんが持ってちゃってもいいと思います。
PR



2009.09.25‖コルダ:その他
← #07 寂しいと君が言うから →


金色のコルダ中心二次創作サイト

top
text
├ コルダ
│├ 土浦×冬海
│├ 金澤×日野
│└ その他
├ コルダ3
│├ NL・ALL
│└ BL
TAKUYO
その他
tresure




Powered by Ninja Blog Template by CHELLCY / 忍者ブログ / [PR]