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2018.10.20‖
2007.11.3のコルダオンリーで配ったペーパー用に書いた話。



 偶然から故意に。
 いつの間にかそうなって、それが嬉しいのだから始末に負えない。冬の陽が落ちるのは早くて、木枯らしは冷たい。
 それでもお前がそこにいるって知っているから、俺は逸る気持ちを抑えきれないんだ。


 すでに薄暗くなっている校門前の妖精像付近に、目的の姿を見つける。
「待ったか?」
 手を挙げて近寄れば、彼女の顔が嬉しそうに綻ぶ。
「いいえ、大丈夫です」
 初めて顔を合わせたときには、こんなふうに会話ができるようになるなんて思ってもみなかった。それどころか、苦手意識が強くて、近寄ることもためらっていた。
 近づけば怯える、話しかければ俯く、少しでも苛立ちを見せれば泣きそうになる彼女が、本当に苦手だった。いわゆる、女の子らしい女の子のど真ん中。俺にとっては苦手の塊以外の何ものでもなかったはずなのに。
 それなのに、いつの頃からか会話が成立するようになって、笑顔を見る回数が増えて、今抱えているこの気持ちが芽生えた。最初こそ自覚した気持ちを否定してみたりもしたが、徒労に終わった。
 気づけば目が追う。彼女に向かう気持ちを止められず、他の男に笑いかけたりすれば苛立ちが募る。徐々にピアノの音が荒れていって、もう彼女に心のすべてを持っていかれてるのだと、白旗を上げざるを得なかった。
 どうしようもなく好きで。この気持ちをどうしたら伝えられるのだろうかと悩んで。
 言葉にしたのは勢いのようなものだったのに、彼女は確かに頷いた。
 頬を染め、はにかんで、恥ずかしそうに、けれどはっきりと。
 衝動に抱きしめた身体は、細く柔らかく壊れてしまいそうで怖かったけれど、おずおずと背中に回った腕により一層力をこめてしまった。想いが通じたことが嬉しくて、こんなに舞い上がっているのを冬海は知らないだろうと笑う。
 目の前で小首を傾げながら見上げてくる彼女の頭にポンと触れると、やけにそこが冷たい。眉をひそめて冬海を見ると、その頬が赤いのはどうしてだろうかと疑問がもたげた。
 すっと手を差し出して触れれば、そこも予想以上に冷たい。
「嘘吐け、大丈夫なんかじゃないだろう」
 言葉に少し苛立ちをこめると、冬海は俯いてしまう。その頬が赤いのも、髪が冷えきっているのも、寒い中ずっと待っていたからだ。自分が待たせたせいだというのに、冬海に苛立ちを向けてしまって、どうにもばつが悪い。
「いいえ。あの、その…平気です」
 ほんの少し震えるような声に、ますます苛立つ。何が、と問おうとしたところで、冬海の顔が上がる。潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を見て、触れたままの頬が、ほんのりと熱を持った。
「先輩を待っているのは嬉しいです。だって、私のところに先輩が来てくれるから。私はそれが幸せなので、だから…」
 平気です、と恥ずかしそうに、冬海の視線が俺からはずれる。
 ああ、もうどうして。
 俺は冬海の頬から手を離して、にやけそうになる口を覆い隠した。どうして、こんなに俺を喜ばせるのがうまいのか。苛立っていたはずなのに、冬海の言葉ひとつでこんなに気分が舞い上がる。
 落ち着くために大きく息を吐いて、もじもじと身体の前で何度も組み替えられている冬海の細い手を取る。触れれば、やはりこちらも冷たい。熱が伝わるようにと、ぎゅっと握りしめる。
「あ、あああの、せ、せんぱ……」
「帰るぞ」
 慌てた冬海の声に笑ってみせて、少し強引に手を引く。
 駅に着く頃には、氷のような手もすっかり温かくなっているだろう。こんなふうに、お互いのものを共有していきたい。楽しいことも、苦しいことも、悲しいことも、身体の熱も。
 お前も同じならいいのに、とそんなことを考えながら握った手に力をこめた。
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