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2017.12.16‖
ひめひび2/明良×菜々美
ラスト



『私、お兄ちゃんにキスしたの』


 菜々美の言葉に、明良は目を剥いた。
 目の前で菜々美は泣き続けている。慰めなくては、と頭は思っているのに、身体が動かない。叶わないはずの願望が、脳裏をよぎる。
 衝撃に動けないままでいる明良に何を思ったのか、菜々美は悄然と頭を垂れる。
「ごめんなさい……」
 ぱたぱたと、床に雫が落ちていく。
 目の前で泣いているのは、誰よりも、何よりも大切な存在で。
 兄だから、という特権を利用して一番側にいた。一番近くで守ってきた。最初は健全だったはずの家族愛や庇護欲が、違う感情にすり替わっているのにも気づかないほど近くで。
 ただ大事で大事で、大事すぎて。菜々美が自分に笑顔を向けてくれるのが嬉しくて、それだけで満足していたはずだったのに。
 あるとき、ふとよぎった願望に、背筋が震えた。
 その感情が間違いだとわかっていても、否定することができなかったからだ。菜々美を想う気持ちに、不純物が混じっていたのに気づいたときにはもう手遅れで、明良は頭を抱えるしかない。
 それでも、菜々美に想いを伝えることだけはしてはいけないと自分を戒めていた。口にしてしまえば、菜々美の側にいられる理由も失う。それは堪えがたかった。気持ちを押し殺すだけで一番近くにいられるのなら、それはひどく魅力的に思えた。想いを口にしたところで、それは叶うはずのないものだったから。取捨選択を迫られれば、どちらを手にするかなど、火を見るよりも明らかだ。
 それなのに。
 菜々美は、何と言った。
 自分の壊れた倫理を直せるのは、目の前の少女だけだったのに。
 『好き』の意味が違うのは、菜々美のほうではなかったのか。自分が抱いている恐ろしく貪欲で醜い気持ちを、菜々美も抱いているというのか。
 明良の喉はからからに干涸びている。それでも声を押し出した。
「………菜々美」
 潤んだ目が、怯えを含んで見上げてくる。
 明良は、ごくりと喉を鳴らす。
 妹に異性を感じるのは、間違いだと頭は理解している。ずっと以前から、そんなことはわかっていたのだ。すぐそばにいて手を伸ばせば奪い取れる位置にあったのに、手を出さないでいられたのは、偏に菜々美がそれを望んでいないと思っていたからだ。
 けれど、想う先が同じならば。
 手を伸ばす。触れた指先が熱い。涙に濡れた頬を拭って、髪を梳く。不安げな菜々美に笑ってみせて、明良は菜々美を引き寄せた。
「………! お、兄ちゃ……!」
 腕の中で暴れる身体を抱きとめて、明良は菜々美の頬を両手で挟む。無理矢理にこちらを向かせた顔は涙に濡れて、真っ赤な目が戸惑うように明良を見つめ返す。長い睫毛と何を言うべきか迷う唇が戦慄いて、明良は誘われて顔を寄せた。触れた一瞬が、ひどく長い。
 みるみる頬を真っ赤に染め上げて、驚きを隠さずに明良を見る目が丸くなっている。こぼれ落ちそうだと、明良は優しく微笑む。
「菜々美の好きは、こういう好きなのか?」
 尋ねるのにも、答えを返さない。驚きがすぎてパンクしているのかもしれないと、一度触れた場所にもう一度触れる。唇同士が触れ合うだけなのに、どうしてこんなに満ちるのだろうと、明良は不思議に思う。
 ほしかったものが、手の中にある。明良は貪るでなく、ゆっくりと何度も唇を重ねる。
 思考回路がパンクしているのはこちらのほうだ。何度重ねても足りない。もっとほしい。菜々美の答えももらっていないのに、一度触れ合わせてしまえば、抑える術がなかった。
「菜々美?」
 答えをねだるように呼びかけると、止めていた呼吸を再開させて、菜々美は喉を喘がせる。
「……な、んで……?」
 泣きそうな声に、明良は目尻に唇を落とす。
「何が?」
 問えば、ふるふると首を振った。
 抱きしめた腕は解かず、至近距離で顔を覗きこめば赤い。これ以上ないというほど上気させた顔が、苦しそうに歪んで逸れる。
「何で、お兄ちゃん、怒らないの?」
「怒ってほしかったのか?」
 震えた菜々美に問い返せば、困ったようにまた首を振る。
「俺は菜々美が好きだよ。多分、お前が思ってる以上に、お前が好きだ」
 逸れていた目が、こちらを向いて瞬いた。明良は幸せを具現化したような笑みを浮かべる。
「妹じゃなくても、お前が好きだ。そういう好きで、お前を想ってる」
 好きだよ、と囁いて腕の中に抱き込めば、おずおずと伸びてきた手が、明良の胸に縋った。ぎゅっと腕に力をこめると、擦り寄ってくる存在に胸が満ちる。
「……本当に?」
「ああ」
 震える声に、明良は静かに頷いた。けれど、それでも信じがたいというように、菜々美は重ねて問うてくる。
「嘘、ついてない?」
「お兄ちゃんは、お前には嘘をつかないって言っただろう?」
「……うん。でも」
 以前も告げた言葉を返しても、それでも菜々美はまだ信じない。明良は菜々美の顔に張りついた髪を丁寧に取り除きながら言う。信じないのなら、信じさせてみせる。この想いは、その程度で揺らぐようなものではない。菜々美が思っているよりも、ずっと昔から明良は菜々美を想っている。
「それじゃあ、菜々美が信じるまで何回でも言ってやる。……お前が好きだ」
 言葉とともに瞳に唇を落とせば、ただでさえ赤い頬が、ますます赤く染まる。どこが限界か試してみるのもいいかもしれない。
「好きだよ」
 囁きながら明良は菜々美の顔中に唇を落とす。それを何度か繰り返すと、息も絶え絶えの様子で菜々美が待って、と顔を伏せた。
「…………し、信じるから…! あ、あの、あのね…」
 くた、と胸に身体を預けてくるかわいさに息を飲んだ明良に、菜々美は顔を上げてふにゃりと笑ってみせた。
「お兄ちゃん、大好き」
 その一言に、明良は強く菜々美を抱きしめた。





2009.08.08up
本当に上河兄妹かわいすぎて困るわー。
しかし、この兄はヤンデレっぽいな…。
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2009.08.08‖TAKUYO
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