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2024.04.20‖
11/22 いい夫婦の日
未来捏造。ヨーロッパ暮らし



「ただいま」
 土浦は自宅のドアを開きながら告げた。
 ヨーロッパでの暮らしも長くなったが、家に帰ると日本語に戻ってしまう。それもこれも、家には日本から連れてきた相手がいるからだ。奥から出てくる小柄な姿に目を細めて、土浦は腕に抱えていた花束を彼女に手渡した。
「あ……、え? ど、どうなさったんですか、これ?」
 大きな花束を手渡されて、それに埋もれながら目を丸くして驚く笙子に、土浦は少し照れて鼻をかく。
「日野と天羽がさ、今日は日本でいい夫婦の日だって、別々にメール寄越してきたんだよ。……っていうか、まあ、それは口実で、いつもほんとに感謝してる。ありがとな」
 いつもは滅多に口にしない土浦の言葉に、笙子の目が潤む。花束に顔を埋めるようにして顔を伏せた。
「………お、お花、ありがとうございます。えと……、私こそ、いつもありがとうございます。梁太郎さんと一緒にいられて、いつもしあわせです。あの……、これからも、よろしくお願いします」
 くぐもったような震える声に、泣きそうなんだということがわかる。ごまかすようにぺこりと頭を下げるのに、土浦はどうしようもなく嬉しい気分になって、花束ごと笙子を抱きしめる。
「ああ、これからもよろしくな」
 囁くように告げると、笙子がこくりと腕の中でうなずいたのがわかった。もっと強く抱きしめたいのに、自分の贈った花が潰れたら笙子は悲しむだろうと腕に力が入れられない。もどかしいジレンマに耐えきれなくなった土浦は、ひょいと笙子の身体を抱き上げ、露になった彼女の顔にキスの嵐を降らせた。



この話だけ、書きたかったものと別になってしまった…。
わざわざヨーロッパ設定にしたのは、あっちは挨拶にハグとかキスとかあるじゃないですか。あれを何年もやってるのに、土浦とだけは緊張しちゃう冬海ちゃん、みたいなのが書きたかったのでした。
まあ、これはこれで。私は冬海ちゃんと土浦がふたりでしあわせなら何でもいいです。
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