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2017.11.18‖

#10

付き合ってる設定



 不謹慎だとは思うけれど、顔がにやけてしまうのは仕方ない。
 土浦はゆるむ口元を手で覆い隠しながら、努めてテレビの画面に集中しているふうを装った。しかし五感は、腕に縋りついている彼女――冬海に向いている。
 冬海が身体を震わせたり、こらえきれないように顔を伏せたり、短く悲鳴を発したり、腕に力一杯しがみついてくるのには、非常に男心をくすぐられる。それ以上に、こんな仕草を見せるのが、かわいくて仕方がない。
 横目でそっと窺えば、涙目になりながらテレビの画面から目を離せないでいる冬海がいる。嫌なら見なければいいのだが、目を離すのも怖いというところだろうか。視線をテレビ画面に戻せば、暗がりから不気味な笑みを浮かべた子どもがあらわれたところだった。冬海は、悲鳴を飲んで土浦に身体を寄せてくる。
 テレビ画面に映っているのは、いわゆるホラー映画だ。
 最近話題になっているとか何とかで、冬海が天羽に借りたものだ。怖いから一緒に見てください、とお願いされて、断る理由のない土浦はふたつ返事で請け負った。そもそも、土浦には幽霊や宇宙エネルギー的な不可思議現象に関しての恐怖心がない。こうして映像になってしまったものは作りものであるし、霊感のたぐいも持っていなかったので恐怖体験をした記憶もない。だから、見ながら悲鳴を上げて醜態を晒す心配は一切なかった。
 もし、その心配があったとしても、何気ない顔を装って格好をつけるのが土浦梁太郎であろうが、それはともかく。
 土浦自身はそんなだったから、ひどく怯える冬海は新鮮ですらあった。こんなに怯えるのなら、最初から素直に言って返せばよかったのではないかとも思う。
 いや、今の状況は土浦にとっては役得なので、ありがたいかぎりなのだが。
 女の付き合いというものもあるのだろう。そう自分を納得させて、土浦はテレビ画面を見るふりをして、冬海を見下ろした。
 ホラー映画を見るというので、どうせなら部屋を暗くしようかと提案したが、さすがに怖すぎると却下された。それでよかったと土浦は思う。暗がりでは、怯える冬海をこんなにはっきり見ることはできなかっただろう。怖がっている顔もかわいい。縋ってくるのが自分だというのも嬉しい。積極的にしがみついてくるなど普段の冬海にはありえないし、やわらかな身体の感触も堪能できて、土浦は満悦至極だった。
 それでも、やっぱり心配になる。こんなに怖がっていて大丈夫だろうか。
 もう小さな子どもではないし、夜ひとりでトイレに行けないとかそういうことはないだろうが、ふとしたときに思い出してしまえば、恐怖に固まってしまうのではないか。
 そんなふうに考えれば、身体が勝手に動いていた。
 しがみついてくる冬海の肩を、ぐっと引き寄せる。一瞬びくりと震えた冬海が、おそるおそるこちらを振り仰いで、涙に濡れた瞳が土浦を捕らえた。
 やっとこちらを向いた、と土浦は何となしに思う。こちらを向かないことが不満だったのかと苦笑をこぼしそうになって、冬海にできるだけやさしげな目を向ける。
「俺がいるから」
 霊などというものが本当にいたとして、実体のないものに敵う気はまったくしないが、気休めになるのならいいと土浦は冬海の細い肩を引き寄せる。冬海の真っ赤になった片方の耳を、自分の胸に押し当てるようにする。これで音も半減するだろうし、冬海もひとりでないことがわかるし、いい手だてであると土浦はうなずいた。
 拠りどころはここにしかない、というようにぎゅっと抱きついてくる冬海に、充足感が胸を満たす。本能とわずかな悪戯心に、このまま押し倒したら今度は自分が恐怖の対象になるのだろうか、と埒もないことを考えて土浦は肩を抱く手に力をこめた。



借りてきたDVDが、間違ってAVだったとかもいいよね!
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