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2017.10.23‖

琥一×バンビ



「あ? オマエは妹みたいなもんだろ」
 わたしの頭をぐしゃっとかき混ぜながら、琥一くんは笑った。
 そのひと言で、デートの楽しい気分なんて吹き飛んでしまった。
 妹。そうだ、妹。小さいころから、わたしは琥一くんにとっての妹。琉夏くんと同じ。
 はじめは、わたしもそのつもりだったのに、いつの間にか違うかも、なんて思うようになってた。カレンだってミヨだって、わたしと一緒にいるときの琥一くんは普段と違うなんて言ってくれるから、うぬぼれてた。
「………そ、そうだよね?」
 顔に笑顔を貼りつけて、首を傾げてみる。いつもどおりに。いつもどおりにできてるかな、なんて心配をしながら。
 胸が痛かった。
 妹扱いされてるのもうれしくて、でもそれだけじゃ足りなくなって。琥一くんに気に入ってもらいたくて、デートに誘うときもどこがいいのか必死で考えたり、似合いもしないビビットな色味のセクシーな服を着たりなんかして。でも、そんなの全部空回りだったのかなって考えたら、じわじわ目頭が熱くなってくる。やばい、泣きそう。でもこんなところで泣いたらヘンに思われる。琥一くんは顔に似合わず優しいから、すごく心配をかけてしまう。
 瞬きしたり、楽しいことを考えたりしてみたけど、そんな抵抗ムダだった。楽しい想い出は、全部全部琥一くんとのことばっかりだ。それに気づいたら、ポロってひと粒がこぼれて、あとはどんどん落ちてくだけだった。琥一くんのこと困らせたくないなって、そう思ったけど涙は止まらない。
 妹じゃ嫌なの。琥一くんにとって、女の子になりたいの。わたしのことを、好きになってほしいの。
 頭の中を勝手な願いがぐるぐる回る。
「お、おい?」
 考えてたとおりの、うろたえた声が上のほうから聞こえてくる。落ち続ける涙を手の甲で一生懸命拭いながら、わたしは首を振る。
 琥一くんはスラっと背が高くてグラマーな体型の女の人が好きだ。いかにも大人な、セクシーな女の人がタイプだ。目線を追いかければすぐにわかる。わたしはといえば、ちまいし、くびれもないし、胸もお尻もきれいな曲線を描いていない。そもそも恋愛対象外なのだ。そんなの知っていたけど、わかりたくなかった。
 涙が止まらない。ひっくひっくと嗚咽を繰り返すのも子どもっぽい。琥一くんに、子どもだって思われる。そんなの嫌なのに、顔は涙でぐしゃぐしゃだ。
「……チッ」
 苛立ったように舌打ちをして、琥一くんが動いた。身体がびくっと震えてしまったのは、それが怖かったからじゃなくて、驚いたからだ。
 そう、驚いて、涙が止まるくらいに。
「………こう、いちくん?」
 びっくりしすぎて、名前もしっかり呼べない。
 わたしは、琥一くんに抱きしめられていた。広い胸に抱き込まれて、太い腕がわたしの頭を抱えている。琥一くんの体温とにおいが、すごく近い。耳元でドクドク心臓の音まで聞こえてきた。
 びっくりしてたのは一瞬。気づいたら、すごく恥ずかしくてたまらなかった。身体をじたばたさせて、琥一くんの腕の中から逃げようとする。それなのに琥一くんは片腕だけで抑えこむみたいにしてわたしを離さない。
「こ、琥一くん!?」
「泣くな」
「ち…違うよ! ただ……、ただ目にゴミが入っただけ! 大丈夫だから……」
 大丈夫だから離して。
 それだけ言えばよかったのに、言えなかった。こんなふうに近づけるのも、最初で最後かと思うと言えなかった。また浮き上がってきた涙をこらえながら、琥一くんに見られないように俯く。
「………見てらんねーんだよ」
 ぎゅっとわたしの頭を引き寄せて、琥一くんが呟いた。
 何でこんなときばっかりわかっちゃうんだろう。いつもみたいに、変な勘違いをしてくれればいいのに。
 琥一くんのせいだ、とここでわたしが言ったら、多分理由を根掘り葉掘り聞いてきて、直してくれようとするんだろう。そういうところが好き。そう思ったら、また涙が落ちてきた。せっかく止まっていたのに、今度もまた止まりそうもない。
 どうして琥一くんはこんなに優しいんだろう。優しくて、鈍感で、そして残酷だ。
 もう妹なんて嫌なの、と告げたら、琥一くんは困るに違いない。琥一くんを困らせたくなくて、わたしは喚きそうになる口をぎゅっと噤む。そして、いつか妹じゃなくなる日がきたらいいのに、と望みの薄いことを願いながら涙を止める努力をはじめた。

2010.08.20up
琥一の「妹」という発言がいつも痛くて仕方なかったので書いた。
「痛い」というのは発する琥一も、受け取るバンビも、という意味で。
琉夏に気を遣いすぎて踏み出せないお兄ちゃんと、琉夏と一緒くたの扱いをされてるんだと落ち込むバンビさんは、ほんとかわいいと思います。
すれ違いが大好きです!
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2010.08.20‖その他
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