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2024.11.22‖

#12

残念な土浦です。※R16



 湿った音を立てて、唇が離れた。自分の膝に乗り、とろんとした目で胸に寄りかかってくるやわらかな身体を感じながら、土浦は今日はいけるんじゃないのかと心中で葛藤する。
 土浦梁太郎と冬海笙子がつきあいはじめてから、そろそろ一年になろうとしていた。こうしてキスを交わすのにも、冬海は非常に恥ずかしがる。土浦としては、もっと先に進みたいのだが、初心で奥手で臆病な彼女に、そのハードルは非常に高いものだった。
 土浦もそれは理解していたから、相当の努力で耐え忍んできたのだが、今日の冬海はいつもと違う。キスをしたあと、こんなに無防備に身体を預けてきたことが、かつてあっただろうか。いや、ない。
 思わず反語になってしまうほどの事態だ。正直、土浦は浮き立っている。
「冬海……」
 彼女の名を呼びながら、土浦は細い肩に手をかけた。ぴくりと手の下で身体が揺れて、涙にうるんだ大きな瞳がおずおずと土浦を見上げてくる。熱をはらんだ瞳に、ごくりと喉を鳴らして、やわらかな頬をなでる。うっとりと冬海が目を伏せるのに合わせて、首をかたむけた。そのまま重なる唇に、冬海は嫌がる素振りを見せない。それに気を大きくして、土浦はキスを深めた。
 今日はこのまま、冬海と行為に及べるだろうか。どんなかわいい声を出してくれるのか。どこに触れれば感じるのか。この愛しい身体に自分の痕を刻めるのだと思うと、ぞくぞくと背中を支配欲がのぼっていく。
 そんな不埒なことを考えながら、自分とは違う熱を持つ口中を堪能し、土浦は肩に置いていた手を徐々にずらしていった。
 しかし、服の上からでもやわらかさを堪能できる胸に土浦の手がたどりつくと、冬海はひときわ大きく震えて合わさっていた唇を離した。
「つ、土浦先輩……!」
 ばっと勢いよく胸をおされて、土浦は胸に触れた手を持て余すことになった。何もないところで、お椀型になっている指が物悲しい。
「わ、わたし……、わたし、その………」
 冬海はどうにか声をしぼりだして、うつむいて、ぷるぷる震えている。短い髪からのぞく肌は真っ赤で、土浦は諦観に目を閉じた。
 わかっている。わかっているのだ。冬海笙子が、そう簡単に攻略できるはずもない。気持ちが通じ合っただけでも十分奇跡なのだ。だから、自分が勇み足であることくらいわかっている。唇が触れ合うだけのキスから、深いキスを交わせるようになるまでに、どれだけの時間をかけたのか思い出してみろ。これから、それ以上に恥ずかしい思いをさせるのに、そんなに簡単に先に進めるはずがないではないか。
 土浦は大きく息を吸って、吐いて、目を開けた。絶望にぐらぐら世界が揺れているような気もするが、冬海にフォローを入れるほうが先だ。
「………悪い」
「ち、違います…! 悪いのは、私で……。土浦先輩は、私のために、たくさん我慢してくださってるんだって、知ってます。私が、あんまり慣れてないから、ゆっくり進めてくださってるんだって…」
 だから、と泣きそうな声に、今までの努力が報われていることを知って、土浦はほっと息を吐き出した。冬海が一般的な恋人同士がどんな恋愛をしているのかなど、知るはずもない。きっと日野や天羽の入れ知恵だろうが、このときばかりはよくやったと褒めたたえてやりたい気分になった。
「俺こそ、焦っちまって悪い。怖いなら怖いでいいからさ。無理させたいわけじゃないんだ。そのうち、お前が大丈夫になってからでいいから」
 そんなことを言いながら頭をなでる。本音を言えば、今すぐにだって押し倒したいが、そんなことをして嫌われるのはごめんだ。どれだけの忍耐で、ここまでこぎつけたと思っているのだ。長い長い苦労の道筋を思い出して、土浦は無理強いはするまいと改めて心に誓った。
 しかし、何故か冬海はそんな土浦の決意を試すように、びくりと震えて胸にすがってくる。
「冬海?」
「あ……あの、せんぱい。その………、」
 あたってます、と蚊の鳴くような声と腰を浮かせようとする動作で、土浦の脳内はぐらりと揺れた。
 男の生理だ。仕方ないではないか。好きな女の子とキスをして、しかもその子は無防備に膝の上に乗ってくれて、身体をすりつけてきてくれて、やわらかな感触と甘いにおいに感覚はすべて奪われている。そんな状態で反応しないほうがおかしい。
 おかしい、が、状況は最低だ。
「わ、悪……」
 冬海を膝の上からどけて、距離を取ろうとして邪魔された。ぎゅっと冬海は土浦の胸のあたりを握りしめて、潤んだ目で見上げてくる。
 あー、ほんとやめてくれ。
 土浦の心の嘆きなど無視して、冬海は耳まで真っ赤に染め上げて、土浦の決意をあっさり水泡に帰した。
「………あ、あの、わたし、今日は、その、最後までは無理ですけど、少しずつ、慣れていったほうがいいかなって、思って……。だから………その…………、お手伝い、できませんか……?」
 恥じらう冬海の姿に、土浦はどこかでぶちりと何かの切れる音を聞いた。



ほんと、すいませんでした。
夜中のテンション怖い。
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